しかし一方で、子供の顔写真については、どの参加者も本当の名前を正確に当てる確率が低くなっていました。

このことから私たちの顔は幼少期にはまだ自身の名前と一致していないものの、大人になるにつれて名前に合うような顔に成長する可能性があると示唆されました。

さらにチームはこの発見を裏付けるために、機械学習システムに大量の顔画像データを与えて、同じ名前を持つ人々の顔の類似点や相違点を分析させることに。

すると非常に興味深いことに、同じ名前を持つ大人の顔は異なる名前を持つ大人の顔に比べて、互いに似ている部分が多いと判断されたのです。

逆に子供の場合は同じ名前であっても、顔の有意な類似性は低いレベルに留まっていたといいます。

名前が同じ同士だと、顔の類似点も多くなる?
名前が同じ同士だと、顔の類似点も多くなる? / Credit: canva/ナゾロジー編集部

どうやら本当に私たちの顔は成長するにつれて、自分の名前に合うような顔立ちになるようです。

しかしどうしてこんな不思議なことが起こるのでしょうか?

「思い込み」が顔を変える

「大人になるにつれて顔が名前に合うように成長する」

この不可思議な現象のメカニズムを説明するのはとても難しい問題です。

しかし研究者たちは、ある一つの仮説を提示しています。

それが「自己成就予言(self-fulfilling prophecy)」という心理プロセスです。

自己成就予言とは「たとえ根拠のない思い込みや信念であっても、それと思い込んでいるうちに本当に実現してしまうこと」を指します。

要するに、自分の名前に込められた意味やステレオタイプ(たとえば、同じ名前を持つ偉人や著名人の性格や功績)を意識的であれ無意識的であれ、自分の中に内面化していくことで、本当にその名前の意味やステレオタイプを表すような外見に近づいていくというのです。

例を挙げるとすれば、「誠」と付けられたら誠実そうな顔立ちになり、「優子」と付けられたな優しそうな柔和な顔つきになるようなものでしょう。