ベネズエラは、中南米でも筋金入りの反米国だ。チャベス前大統領の時代から、繰り返し公然とアメリカの政策を批判してきており、マドゥロ大統領も同じ反米路線をとる。親露的であると言い換えてもよい。アメリカは中南米諸国に不当な介入を繰り返している、というのが、批判の中心点である。

アメリカは、当然、ベネズエラを「悪の枢軸」側の国とみなしている。ベネズエラが原油埋蔵量で世界一とも言われる資源大国であること、カリブ海に面しているアメリカにとっての地政学的要衝に位置していることなどの事情があり、多大な関心を寄せてきた。長期に渡る厳しい経済制裁を続けている。アメリカが、ベネズエラでクーデターを起こすために暗躍してきたことも、政府高官の回顧する発言などから、非常に蓋然性の高い事実とみなされている。

野党側勢力の有力者のマリア・コリーナ・マチャド氏は、親米的な姿勢を長年にわたってとっており、ワシントンDCとのつながりは深いとみなされている。欧米メディアでも好意的に取り上げられるのが一般的だ。

野党側は、事前調査の結果などをふまえると、野党側候補のエドムンド・ゴンサレスが勝利したことに疑いはない、と主張している。この主張を信じて抗議行動をしている国民が相当数いることも間違いない。そもそもマドゥロ政権が強権的な性格を持ち、選挙で不正を働こうとすれば、そうできる素地を持っていることも確かだと思われる。全ては「権威主義」政府の民意を無視するための不正による混乱だ、というのが、欧米諸国側で信じられている「陰謀論」である。

しかし他のマドゥロ政権のみならず、国際事件をめぐって反米的な姿勢をとり、アメリカの公式説明に常に疑いの目を向けている人々は、事前の調査なるものがそもそも欧米系の組織によってなされたものでしかないので根拠がなく、抗議運動も欧米系の勢力の扇動によってたき付けられているものだ、と考えている。

欧米諸国が、チャベス=マドゥロ政権に対して敵対的な政策をとり続けてきていることは事実であり、野党側に心情的に肩入れしているだけでなく、政権転覆の動きを支援したい大きな動機を持っていることも事実だろう。そこを重視すると、欧米の世界支配を警戒する系の「陰謀論」に陥る。