一方、クレジットカード債務のほうは総額がやっと1兆ドルに達した中の1440億ドルですから、過去1年で約15%も増えているはずです。しかも直近の今年第1四半期との比較では住宅ローンが300億ドル増に対し、クレジットカード債務の増加額は450億ドルとなっています。

クレジットカード債務残高の前年同期比増減率は、次のグラフのように変化していました。

2020~21年のコロナ対策大盤振る舞いで一過性の激減があったあとは、10%台後半の伸びが定着してしまった感があります。さすがに「これは危ない」と思ったのか、直近では一括払いの残高は増えつづけていても、分割払いの債務残高は微減に転じました。

しかし、焼け石に水とも言えないほどの小さな減少幅であり、「一括払い」のつもりで借りるカードローンはまだ激増し続けています。これがどんなに悲惨な結果を招くかは、次のクレジットカード金利推移でご想像いただけるでしょう。

2010年代前半あたりには、全クレジットカードローン平均金利は分割払い金利よりかなり低い時期もあったのですが、連邦準備制度による利上げ連発が始まった頃から、全クレジットカードローン平均金利が分割払い金利にさや寄せする傾向が顕著です。

一括払いで済むつもりで借りたカードローンが、決済日に間に合わずに延滞金利を取られることになったというケースが多いのでしょう。

自動車ローン負担も急激に重くなっている

クレジットカードローンほど目立ちませんが、自動車ローンも急激に金利が上がっています。

過去10年ほど、初めのうちはセダンやハッチバックよりSUVを買う人が増えたことによって、最近ではEVを買う人も増えていることによって、新車の価格はかなり上がっています。

しかし、2013~21年の間は、自動車ローン金利が4%台と非常に低かったので、ローン支払い負担はあまり増えていなかったのです。

ところが、新車価格は上がり続け金利も急激に上昇しているため、直近3年間で月間ローン支払い負担は28%も高くなって、736ドルに達しました。これは史上最高の自動車ローン負担額です。

過去約2年にわたって実質賃金が下がりつづけていたのですが、ここ2~3ヵ月わずかながら上昇に転じました。この事実がアメリカ経済悲観論に対する反証だとおっしゃる方もいらっしゃいます。

しかし、新車価格の上昇率は直近1年で3.5%にとどまったといっても、自動車ローンの返済負担は激増しています。さらに、公共交通機関の乗車賃は直近1年で9.0%も上がってしまいました。

サブプライムローン・バブルが崩壊したあと、ローンを組んで住宅を買うことができるのは信用点数が660以上の人に限定されたと言っても過言ではありません。最近では、自動車ローンを新規に借り入れる人の中でも信用点数が660以上の人の比率が高まりつつあります。

このままでは、アメリカ国民の中で移動の自由を奪われてしまう人の数が激増するのではないかと思います。

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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2023年8月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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