世代連関を通した「「全世代型社会保障」の構築を

「世代」概念の幅を広げて、研究領域としてはやや手薄と思われる時代診断や社会変動にも応用する点で、多様な「世代」論的研究があるので、ぜひ参照してほしい(金子、2024)。

図5のアクターが図6の3つの世代に挿入されて、初めて要介護への対応方針が見えてくる。なぜなら、「世代間は基本的に相互継承生生的な連関の関係」(鈴村ほか、2006:413)であり、将来世代は過去から現在へと継承されて、育成・発展するからである。

「骨太の方針」全体の精査がほしい

6月21日に出された『基本方針』が全世代型社会保障の構築を標榜するのならば、その内容をより一層具体化することにより、内政の軸の立て直しとともに、外交面でも11月に予想されるアメリカの政界の変動やフランスやドイツなどG7の主要国の動きにも適応できるはずである。

その意味でも4冊に分けられた「骨太の方針」全体について、日本の学界はもちろん、政界、官界、財界、マスコミ界の精査を期待するものである。

【参照文献】

閣議決定,2024,『経済財政運営と改革の基本方針2024』(6月21日). 閣議決定,2024,『経済財政運営と改革の基本方針2024~政策ファイル』(6月21日). 閣議決定,2024,『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版』(6月21日). 閣議決定,2024,『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版 基礎資料集』(6月21日). 金子勇,2014,『日本のアクティブエイジング』北海道大学出版会. 金子勇,2016,『日本の子育て共同参画社会』ミネルヴァ書房. 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房. 金子勇,2024,「『世代と人口』からの時代認識」金子勇編『世代と人口』ミネルヴァ書房:1-71. Mannheim,K.,1928,“Das Problem der Generationen,”Kölner Vierteljahrshefte für Soziologie,7 Jahrg.Heft2.~3.(=1976 鈴木広訳「世代の問題」樺俊雄監修『マンハイム全集3 社会学の課題』潮出版社:147-232). プレジデント社編集部,2024,『PRESIDENTMOOK』プレジデント社(3月28日号). プレジデント社編集部,2024,『PRESIDENTM』プレジデント社(6月14日号). 総務省統計局,2024,『2024社会生活統計指標 都道府県の指標』同統計局. 鈴村興太郎・宇佐美誠・金泰昌編,2006,『公共哲学20 世代間関係から考える公共性』東京大学出版会.