首相官邸HPより

全世代型社会保障の構築

「骨太の方針2024」点検第3回目もまた、前2回(7月14日、7月21日)と同じく4冊を読み込んで、その普遍性と限界についてまとめることにする。

ここで取り上げる「全世代型社会保障の構築」は、『基本方針』の「3・主要分野ごとの基本方針と重要課題」の最初に置かれていることで、前2回の論点とは『基本方針』での力点が異なる。その後「(2)少子化対策・こども政策」がある。そして、(3)公教育の再生・研究活動の推進が論じられ、以下(4)戦略的な社会資本整備、(5)地方行財政基盤の強化が続く。

いずれも私が提唱した「社会資本主義」の柱になる重要項目でもある(金子、2023)。

克服したい課題

「全世代型社会保障の構築」の冒頭には克服すべき課題として、「少子高齢化・人口減少」が位置づけられた。これは「(2)少子化対策・こども政策」へのつなぎでもあるが、もはや手遅れであり、これまでと同じようなバラマキ中心ではこのテーマの克服は難しい。政府が好む表現である「スピード感をもって」、それに適応できる社会システムの構築にテーマを変更したい。

なぜなら、合計特殊出生率を反転させようにも、未婚率の上昇が続いているし、出産できる女性の総数が減少を始めているからである。

出生数の減少をひき起こす原因

出生数の減少をひき起こす原因は多く、なかでも婚姻率と未婚率の低下、産める年齢の女性母集団の減少、大学教育費用の高騰、非正規雇用による所得の伸び悩み、居住する住宅の狭さ、単身者の増大などがある(図1)。

図1 出生数減少を促進する要因(金子作成)

産める年齢の女性母集団が減少する「少母化」が顕在化した

(A)(B)ともにいずれもが大きな要因になるが、今後にかけてはとりわけ産める年齢の女性母集団の減少が決定的に深刻である。

なぜなら、20世紀末から21世紀までの40年間で行なわれた国勢調査によると、その年代の女性の数は1980年で約3060万人、2000年で約2930万人、そして2020年で約2500万人となり、40年間で約2割減ってきたからである。

この連続的減少によって、1年間では同じ合計特殊出生率でも、「少母化」として産める年齢の女性母集団が減少すれば、産まれてくる子どもの総数も当然少なくなる。

「少母化」は政策的なコントロールが不可能

図1に分類された産める年齢の女性母集団が減少する「少母化」は、今後出生数の減少をひき起こす大きな要因であり、結果的に少子化の原因にもなる。

しかしそれは、もはや政策的なコントロールが不可能な人口関連の与件となってしまった。合わせて、婚姻率も未婚率も政治による制御は不可能な変数である。

2024年と2044年の「産める年齢の女性母集団の減少」の比較から

ここでデータの制約と計算の簡便さを考慮して、総務省統計局が7月19日に公表した「人口推計確定値」(2024年2月1日現在)と2044年に推計される「産める年齢の女性母集団の減少」を比較してみよう。

表1は2月1日現在の日本人女性0~49歳までの5歳階級別の実数(単位千人)である。

表1 日本人女性の5歳階級別の実数出典:総務省統計局「人口推計」(2024年2月1日現在)