効率化を進めた物流システムが強さの源泉

 ワーカーの管理の厳しさという面では、配達員も同様だ。アマゾンの荷物を個人事業主が配達する仕組み「Amazon Flex(アマゾン・フレックス)」をめぐっては今年1月、アマゾンジャパンと業務委託契約を結ぶ男性ドライバーが労働組合を結成し、同社に団体交渉を申し入れるという事案が発生。男性は会見で「1時間に20個以上の荷物を配送しないといけないオファーが多い」「休憩を取る時間がなく、トイレを我慢したり、信号待ちの間におにぎりを食べて食事を済ますこともある」などと過酷な労働実態を告白。報酬は1時間あたり約1600円であり、配達用車両の購入費や燃料費、各種保険料などはドライバーの自己負担。配達する荷物量や報酬、ドライバーに対する評価はアマゾンによるアルゴリズムで決められ、評価が低いとアプリのアカウントが停止され事実上の解雇となってしまうという。ちなみに配達員は労災保険もかけられていない。

 EC関連企業幹部はいう。

「アマゾンの強さの源泉は、圧倒的な集客力を誇るECサイトと洗練されたユーザビリティー、そして極限まで効率化を進めて進化させた物流システムにある。それを実現するにはヒューマンエラーやヒトの能力不足による効率低下の要因を徹底的に排除する必要があり、従事するワーカーは完全に巨大なシステムの一部に組み込まれることになる。その結果、従業員は厳密に管理・監視される」

 そうした効率最優先の思想は本部社員の人事制度にも表れている。社内には、同僚との業績比較や将来発揮することが期待される潜在能力などの観点から従業員を評価するための評価プロセスを記したガイドが存在し、「フォルテ(Forte)」と呼ばれる従業員評価が年1回実施され、そこで給与が決まるという。また、各部門のマネジャーには「悔やまれない退職率」の割り当てや、各業績等級に一定割合の従業員をランク付けすることなどが課されているという。