大手ECサイト運営会社アマゾン・ドット・コムの物流倉庫の休憩室に設置された自動販売機に監視カメラが内蔵されており、社員の様子を撮影していたことが問題となっている。米国メディア「Sahan Journal」の報道によれば、米国ミネソタ州の倉庫で発覚し、アマゾン側はカメラの誤作動によるものだと説明しているものの、現地の労働団体などが問題視している。アマゾンといえば今年1月、業績監視のために過度な監視システムを導入するなど一般データ保護規則(GDPR)違反があるとして、フランスの情報保護当(CNIL)から罰金3200万ユーロ(約51億5000万円)を課せられるなど、従業員監視が厳しいことでも知られているが、改めてアマゾンの企業体質がクローズアップされている。

 アマゾン倉庫では従業員によるスキャナーの利用履歴をデータとして保管・分析し、従業員の評価や教育、業務効率の向上などに活用している。CNILは、データ保管期間が1カ月もの長期になっている点についてGDPRに違反していると判断。また、

・スキャンの間隔が1.25秒以下になるとエラーが表示される
・10分間スキャンしないと、動作していないとみなされる
・1~10分間のスキャン中断は「遅延」とみなされる

という措置についてもGDPRに違反していると判断した。このほか、2020年4月までは期間従業員はスキャナーを通じてデータを収集されている旨を通知されていなかった点や、従業員が職場内に監視カメラが設置されている旨を知らされていない点、監視カメラの保管データのセキュリティー管理が不十分でありデータへのアクセス権限が複数の人々の間で使い回されている点もGDPR違反だとした。

過酷なノルマ

 アマゾン倉庫での従業員監視の厳しさは以前から指摘されてきた。たとえば当サイトは23年12月11日付記事で次のように伝えていた。

「アマゾンの倉庫の場合、労働環境は決して楽とはいえないでしょう。倉庫の棚入れ業務では8秒に1つ、1時間で合計400個の商品を箱に詰めなければならないなどの過酷なノルマを課され、達成度は秒単位で手元のデバイスに記録されます。トイレ休憩にどのくらいの時間かかっているかなども記録され、労働者は自分のペースと関係なく非常に緊張感のある環境下で働くことを余儀なくされています。

 労働組合に入り団体交渉をしているアルバイト経験者の話によると、毎日昼の休憩後に午前中の自分のノルマ達成度合いが書かれた紙を持ってこられ、ノルマに達していない日が続くと改善を要求されるそうです。あまりにもノルマ未達成が続くとトレーナーがずっと横につき、動作について逐一指摘されるという『トレーニング期間』が開始されるといいます。

 また、かなりの重労働のため、腰痛などを患う懸念に常にさらされているともいえます。ほかにも、アマゾンには倉庫に入荷してきた箱詰めの商品を倉庫内に搬入する作業や、バンに積むために搬出する作業がありますが、これは半屋外で行われます。その部署に配属されると空調が十分に効かない場所で作業することになるので、夏は熱中症のリスクが高いでしょう」(NPO法人POSSE代表で雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏)