ショートショートや空想の魅力とは?

―――ショートショートを書くことや空想することの魅力について教えてください。

田丸さん:まず、シンプルに楽しいことですね。僕自身も楽しいので、まだショートショートの世界を知らない方には、楽しいですよとお伝えしたいです。

ショートショートに親しむようになると、物事が多層的に見え始めて、日常の見え方が豊かになると思っています。

たとえば、イヤホンを見たら「あれが熱で溶けるイヤホンだったらどうしよう」とか、空想が広がります。

僕は「空想で世界を彩りたい」と言っていますが、空想・妄想の延長線上には、物事をいろんな切り口から見られるようになり、いろんなイノベーションが起こり、考え方や価値観がより多様になって、誰でも生きやすい、明るく健やかな社会になっていく未来があるのではないかと思っています。ショートショートが、そのきっかけになればいいなと思っています。

日本人は特に「空想ネイティブ」

―――これからの時代、空想や妄想、アイデアがすごく大事になってくるんじゃないかなと感じています。スマホなど、数十年前に誰かが空想していたものが現実に商品になっていますよね。今の空想や妄想も数十年後に現実になるんじゃないでしょうか。

田丸さん:僕は、日本人は特に「空想ネイティブ」じゃないかと思っています。小さい頃から小説、漫画、アニメなど、空想に自然に触れてきた方が多いんじゃないかなと。

思春期で空想を外に出さなくなるのはある程度しかたないのですが、そこから戻ってこないのが問題だと思っています。社会に出たら「現実的じゃないことを考えないで、目の前のことをやりなさい」と言われ、空想や妄想を「変だ」と言われる風潮がまだあります。

でも、世界のビジネスの最先端では、イーロン・マスクさんのように空想から生まれるアイデアが求められる傾向にあります。空想ネイティブで素質のあるはずの日本人がそれをできていないのは、あまりにもったいないと。

「自分には空想はできない、関係ない」と思っている方もいらっしゃると思います。でも、あなたも自由な空想ができるし、やっていいんです。

世界を変えることに役職や年齢は関係なく、あなたという「個」の空想をつぶさないで大事にしてください。

出てくる空想は玉石混交だと思いますが、その積み重ねで、多様性や明るい世界につながるものが増えていくと思っています。空想は特殊な人だけがするものではなく、誰でもやっていい、むしろやるべきだと強く伝えていきたいですね。

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