仕事でアイデアが出せなくて悩んでいるとき、足りないのは「空想すること」なのかもしれません。

「ショートショートの書き方講座」を定期的に開催している、ショートショート作家の田丸雅智さんに、大学で工学部に進みながらも作家になった理由や、空想の魅力などについてお聞きしました。

理系であることがショートショートにつながった

―――ご自身の経歴で、どの部分が作家という仕事や、「ショートショート書き方講座」の活動につながったと思いますか。

田丸さん:そもそものところで文系・理系という分け方はどうなのかなとは思っているのですが、その前提の上で、やっぱり理系的な学問を通じて得たことは大きかったと思っています。たとえば数学。僕は高校数学で止まってはいますが、数学から学んだことはとても大きいですね。

僕はロジカルな人間だと思われることも少なくないのですが、もともとは感覚的というか、衝動タイプなんです。けれど、数学を学んだことで、物事を理性的に整理して考える訓練ができたように思っています。

ロジカルに考える力は後付けで身に付けたものなのですが、書き方講座のメソッドをつくるときにも明らかに役立ちました。ショートショートの書き方は感覚論ではなく、段階を踏むことで、誰でも書けるようになるロジカルなものなのですが、これは完全に数学で学んだやり方です。微分積分が分からないと悩む友人に、段階を踏んで教えさせてもらっていたときの経験も役に立ちました。

―――高校時代にロジカルに考える力を後天的に身に付けたという点が興味深いです。

田丸さん:僕は、勉強もいいものですよ、とよく言うのですが、学校の勉強が役立たないという風潮に惑わされないでほしいと思っています。

前提として学校の勉強が合わない人にむりやり押し付けようとは思っていません。でも、やらされているにせよ、勉強を頑張っている人に対しては、「今やっていることは社会では役に立たないんだ」と卑下しないでほしいと伝えたいです。

高校で学んだ数学は直接仕事で使うわけではありませんが、たとえば、社会に出て未知の問題に取り組むためのトレーニングになります。物事を順序立てて考える訓練にもなったり、自己評価とPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを身に付けることにもつながったり。

数学だけでなく、学校の勉強は、社会に出てから自分の能力を伸ばしていくために応用できるものだと思っているので、積極的に使っていくのが個人的にはおすすめです。