■破滅への道のり

 どれだけ浪費を重ねても、ジルの心は満足することがなかった。狂気じみた行動の陰には、恋人とも噂された戦友ジャンヌ・ダルクの非業の死が影響しているとしばしば指摘される。彼の周りには財産目当ての怪しげな輩も集まるようになっていた。聖職者でありながら黒魔術や錬金術に傾倒するフランソワ・プレラーティもその一人であった。そしていつしか、ジルは子供ばかりを狙うシリアルキラーとして活動するようになったのである。

子ども800人を…… 超越的シリアルキラー、鬼畜貴族『ジル・ド・レ』が最凶すぎる!=15世紀フランス
(画像=画像は「ANCIENT ORIGINS」より引用,『TOCANA』より 引用)

 ジルの地位と財産をもってすれば猟奇犯罪などたやすかった。彼は街で目に付いた見目よい子供を小姓として雇い入れ、公然と子供たちを連れて行った。子供が領主の目についたとなれば、家族も大喜びで送り出したのである。城門前には多くの子供たちが我も我もと詰めかけたという。時には誘拐して自分の城へと連れ去ることもあったが、殿上人の行いに平民が文句など付けられるわけもない。民衆も城に行った少年たちの姿が消えたことに気づいていたが、誰も何も口にしなかった。

 被害者の多くは男の子であったという。城に連れて行かれた子供たちは非常に親切にされ、その美しさを褒められた。ジルは彼らに優しく接したが、それはもちろん最初だけだ。哀れな子供たちは突如豹変した領主によって犯され、喉を切り裂かれたり殴られたり吊るされたりして無残に殺されることとなったのである。

子ども800人を…… 超越的シリアルキラー、鬼畜貴族『ジル・ド・レ』が最凶すぎる!=15世紀フランス
(画像=犯行のイメージ図。画像は「Wikipedia」より引用,『TOCANA』より 引用)

 裁判での証言によると、ジル自ら子供たちを殺害することもあれば、共犯者にやらせることもあった。首を切り落とす、喉をかき切る、頭を殴ると、ありとあらゆるやり口で子供たちは殺された。ジルは死にゆく少年たちに性的な興奮を覚え、その腹上に乗って苦悶する表情を楽しんだ。死んだ後はその屍体を犯した。愛らしい顔立ちの子の生首を鑑賞して楽しみ、胴体を切り開いて血まみれの内臓を眺めては共犯者プレラーティらと笑いあったという。用済みになった屍体は燃やして、川に流して捨てた。

子ども800人を…… 超越的シリアルキラー、鬼畜貴族『ジル・ド・レ』が最凶すぎる!=15世紀フランス
(画像=画像は「Wikipedia」より引用 ,『TOCANA』より 引用)

 狂気じみた浪費と猟奇殺人に明け暮れたジルであったが、その終わりはあっけなく訪れた。1440年5月15日、ジルはある司祭と所領をめぐってトラブルになり教会を襲撃した。この事件がきっかけで彼の身辺が調査されることとなり、ついには恐るべき所業が表沙汰となったのである。同年9月14日、ジルは逮捕された。その被害者は記録で確認できるだけで少なくとも37人、推定では140~800人に及ぶともされる。

 ジルはその犯行の様子を詳細に自供している。怪僧プレラーティとの関連もあり、猟奇殺人は黒魔術の儀式だったのではないかと疑われたが、彼はそれを否定している。ジルは全ての悪行は自分の邪悪な悦楽と喜びのために行ったと語り、他の意図も誰の指図もなく、自身のよこしまな想像を元に行ったと証言している。