回収特需は前回ほど大きなものは期待できず

 また、今回の新紙幣刷新により、紙幣の図柄など仕様が変更される。そして、紙幣の識別には画像認識や大きさなどを読み取る必要が出てくるため、今回の新紙幣刷新に伴い、金融機関のオープン出納システムやATM、自動販売機などの特需が発生している。

 なお、今回の紙幣には3次元ホログラムなど新技術を導入する一方で、紙幣の寸法の変更は前回同様にないとのことである。このため、ハード面の更新需要は限定されることが予想され、ソフトウェアの更新需要が中心になっている。そして、日本自動販売システム機械工業会の試算によれば、今回の新紙幣による現金取り扱い機器の改修特需として約5000億円のコストがかかる見込みとしていた。

 ただ、金融機関向けのATMなどでは営業店舗の減少やキャッシュレス化等に伴い、貨幣流通量の減少が予想されており、関連業界の事業環境が前回の紙幣刷新時と異なる点には注意が必要だろう。実際、全国銀行協会のデータに基づけば、銀行などCD・ATM設置件数は2018年9月末の10.7万台から2022年9月末には8.9万台まで減少している。

政府が新紙幣を発行する隠れた狙い…小売店など民間事業者は巨額コスト負担
(画像=『Business Journal』より 引用)

 一方、流通業やコンビニなど小売業向けのATMは店舗数の増加などから前回よりも更新需要が拡大することが期待される。実際、日本フランチャイズチェーン協会のデータに基づけば、コンビニエンスストアの店舗数は2010年の4.3万店から2022年には5.7万店まで拡大している。しかし、こうした小売り向けのATMは金融機関向けよりも単価が安く、更新サイクルが短いということもある。

 また、一般社団法人日本自動販売機工業会の調査によると、自販機の普及台数は減少トレンドにあり、2010年までは520万台を維持していたが、2022年末時点では397万台まで減少している。このため、今回の紙幣刷新に伴うATMや自販機の改修特需は前回ほど大きいものは期待されず、特需の出現時期も分散されることになろう。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

提供元・Business Journal

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