どんな人たちに向けて講座を開催していきたいか

―――今後、どんな人たちや場所に向けてショートショートの書き方講座を開催したいと思っていますか。

田丸さん:あらゆる人に向けて、開催していきたいと思っていますが、特に教育現場と企業向けには今後も幅広く開催していきたいです。

今、小4や中1の国語の教科書に僕のメソッドや作品を載せてもらっているので、それをきっかけに、子どもたちにいっぱい空想してもらって、ショートショートのお話を考えてもらう機会を広げたいと思っています。

企業向けでは、ワークショップをきっかけに新しい商品やサービスが社会に生まれるだけでなく、それによって、世の中が良い方向に変わるところまで行きたいなと思っています。

あとは、グローバルにも広げていきたいです。ここ数年、海外でも講座を行っているのですが、通訳の方に入ってもらって、僕が日本語で話して英語などで書いてもらうパターンと、海外の日本語学習者の方に日本語で受講してもらうパターンとがあります。

最近多いのは後者で、オンラインで中国や韓国、トルコなどで開催しています。

最初は、言語って国境を越えないと思っていたんです。

ですが、海外の方向けに開催する機会をいただいたところ、いつものように講座をしたのですが、みんな普通に書けていましたし、笑うポイントもほぼ同じだったので「ショートショートって、国境を越えるんじゃないか」と思ったんです。

考えてみると、ショートショートって、シンプルなアイデアとシンプルなストーリーが基本なので、神話や昔話と近いところがあるんです。神話や昔話って各国で似たようなものもあると思うのですが、ショートショートも文化や言語を越える可能性があると気づけたので、今後は海外向けの講座も広げていきたいです。

日本と海外で反応は違う?それとも…

―――逆に、日本国内と海外で、反応が違うと感じた部分はありましたか。

田丸さん:おもしろいもので、実はそんなにないんですよ。もちろん細かい言語のニュアンスの差はあると思うのですが、反応でいうと、日本でも海外でも同じです。

最初「何をさせられるのかな」と困惑気味なところも、書いた作品をお互いに聞いてニヤニヤしたりするところもほぼ同じです。

作品の内容自体も、今のところは国によって差は感じられないですね。たとえば、シンガポールの日本人学校だと、出てくる単語にマーライオンなど現地のものが混ざっていたりはするのですが、それは身近にあるものが違っただけで、本質的な差ではないように思っています。

内容の違いには、どちらかというと個人の経験や知識が大きく関わってくるように考えています。



後編では、田丸さんが大学で工学部に進みながらも作家になった理由や、空想の魅力などについてお聞きしました。

著書『マタタビ町は猫びより』の購入はこちらから