慶應義塾大学に入学して系列の小学校にあたる慶應義塾幼稚舎からエスカレーター式で進学してきた人々の話を聞いて、日本社会には一般の人々が触れることがない最上位の「資本主義1部リーグ」が存在し「有産階級が別のゲームをしてる」ことを知ったというSNS上の投稿が、一部で話題を呼んでいる。慶應幼稚舎の生徒はどのような世帯の子が多いのか、また、その教育内容や学校生活は一般的な小学校と大きく異なるのだろうか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 早稲田大学と並ぶ国内最難関私立大学であり、抜群の就職実績を誇る慶應義塾大学。数多くの大手企業トップ、小泉純一郎氏や故・橋本龍太郎氏など首相経験者を含む政治家を輩出し、経済界で強固な結びつきを誇るOB・OG組織の三田会を有するなど、「慶應卒」という肩書が持つブランド力と魅力は誰もが認めるところだ。

 そんな慶應系列の小学校、慶應義塾幼稚舎は極めて狭き門であるとともに、「コネがなければ入れない」という話もささやかれるほど受験の実態は謎のベールに包まれている。2024年度の1年生の募集人数は男子96名、女子48名の合計144名。入試ではペーパー試験はなく、運動・行動観察・絵画のテストが行われることまでは知られているが、小学校受験対策スクールの関係者はいう。

「有名私立小学校にもコネが重視される学校とそうではない学校があり、慶應幼稚舎は前者、同じ慶應系列でも慶應義塾横浜初等部は後者であり、試験の結果で合否が決まります。慶應幼稚舎受験におけるコネとは、父親や祖父が慶應幼稚舎から慶應大学まで上がったOBで、かつ大企業社員などステータスがある職業に就いているというパターンがもっとも強いです。中学や高校から慶應に入って大学を卒業したというケースも加点要素になり、大学から入った人でも勤務先が慶應連合三田会の大会のスポンサー企業であったり、個人で三田会の幹事を務めた経験があったりと、なんらかのかたちで三田会に貢献した実績もコネありとみなされます。

 こうしたコネがない場合、慶應幼稚舎に事実上の推薦枠を持っているといわれている御三家と呼ばれる私立幼稚園に入ることも、広義の意味でコネとなりますが、入園するには推薦状が必要なため、誰でも入れるわけではありません。

 コネではなく実力で合格するには、慶應幼稚舎の合格実績が高い幼児教室や体操・絵画教室に通うのが近道となりますが、有名な幼児教室は0歳から通うことも珍しくなく、小学校受験までにトータルで1000万円ほどかかることも覚悟しなければなりません。ですので首都圏に在住で経済力の高い世帯でないと難しいということになります。

 一部では『学校へ寄付する寄付金の額が高くないと入れない』という話も広まっていますが、慶應幼稚舎に限らず有名私立小学校の入試では寄付金の有無は基本的に合否には影響しないと考えたほうがよいです」(小学校受験対策スクールの関係者/4月13日付当サイト記事より)

名門私立小学校入試とコネ

 慶應幼稚舎の入試の実態について、お受験コンシュジュ&戦略プランナー、いとうゆりこ氏はいう。

「一クラスの人数は男子が24名、女子が12名の計36名で、一学年あたり4クラスあります。“コネなし”で入学した生徒は全体の2割ほどで、入試ではコネが大きく影響してきます。ここでいうコネとは、親御さんが慶應幼稚舎、もしくは慶應系列の中学校や高校の卒業生であったり、大学から慶應に入ったパターンでも勤務先が同窓会組織である慶應連合三田会の大会のスポンサー企業であったり、個人で三田会大会の幹事を務めたり、慶應義塾の評議員をお手伝いしたりと、なんらかのかたちで慶應に貢献していることを指します。ちなみに芸能人やプロスポーツ選手の子どもも多いですが、仕事関係で慶應義塾とコネがある方や組織の推薦を受けることで入学するケースも少なくありません。

 慶應幼稚舎はペーパーテストがないため、コネの要素が入りやすいという面もあるかもしれませんが、コネがない世帯の子どもでも運動・行動観察・絵画のテストで飛びぬけた才能を示すことで合格する場合もあります。

 かつては一般の人にとっては極めて狭き門でしたが、1999~2002年に幼稚舎長を務めた金子郁容氏が進めた改革、さらには世の中の個人情報保護強化の流れのなかで願書に親の学歴や職歴の記入欄がなくなったことなども影響し、徐々に一般の人々でも入れるようになりつつあります。もっとも、願書には自由記述の備考欄があり、そこで『●年に慶應義塾普通部を卒業』『現在、父親は●●に勤務』といったかたちで慶應出身である点や有名大企業の社員である点をPRすることになります」