<柏島/写真提供:幡多広域観光協議会>
こんにちは、たびこふれのシンジーノです。
四国の高知県といえば、坂本龍馬、カツオ、はりまや橋、最後の清流 四万十川などを聞いたことがあるでしょう。
県北部を急峻な四国山地の山々に囲まれ、森林の占める割合(森林率)は全国平均が67%であるのに対して、高知県は84%で全国1位。
手つかずの自然に溢れた土地です。
そんな高知県は、実はSDGsに深く関わっていることをご存知でしょうか?
高知県の「一般社団法人幡多(はた)広域観光協議会」が取り組んでいる「SDGsプログラム」が2022年1月、環境省と一般社団法人日本エコツーリズム協会が選ぶ「第17回エコツーリズム大賞」の特別賞を受賞しています。
「SDGsって聞いたことはあるけど難しくてなんかよくわからない」という人も多いのではないかと思います。
かくいう私もその1人でした。
しかし実際に現地に訪れて話を聴き、体験をすることで私のSDGsへの見方は大きく変わりました。
「勉強になったなぁ」で終わらず、自宅に帰ってからも自分が何を意識し、どう行動すれば良いのかを気づかせてくれた旅でした。
この記事では、そんな高知県幡多エリアのSDGsへの取組みの実状を、あまり堅苦しくならないようにご紹介します。
また、高知県西南部の豊かな自然、懐かしい風景、グルメ、明るく温かい高知県人気質などもふんだんにご紹介しましょう。
あなたもきっと、目からウロコ、となるでしょう。
初めてなのに、どこか懐かしい日本の原風景が車窓に流れてゆきます。
SDGsとは
そもそもSDGsとはなんでしょうか?
「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の略で,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標を指します。
17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます(外務省サイトより抜粋引用)
なかなか高邁な目標ですが、高知県幡多エリアは17のゴールの中の「14. 海の豊かさを守ろう」「15. 陸の豊かさも守る」の達成を目指し、地域の自然環境や生態系が守られることによる「11. 住み続けられるまちづくり」、地域側からの地球を守るアクションを起こすことで「13. 気候変動に具体的な対策」に取り組んでいます。
幡多エリアのSDGsプログラムを体験
幡多(はた)エリアとは、高知県の西南部に位置する四万十市・宿毛市・土佐清水市・黒潮町・大月町・三原村で構成された地域です。
全長196kmに及ぶ西日本最長の大河・四万十川や全国トップの面積を誇る森林など豊かな自然環境に囲まれたエリアです。
海、山、川の自然に恵まれたこの地域が互いに繋がりながら生態系を形成していますが、一見自然豊かに見えるこの地も自然が崩壊しつつあります。
その実態や背景を知り、私たちができることは何かを考えるきっかけとなるプログラムが幡多エリアのSDGsプログラムです。
その中から今回3つのワークショップ(砂浜美術館、トンボ王国、柏島)を体験してきました。
砂浜美術館
砂浜美術館は、黒潮町の豊かな自然と、その自然と上手につきあいながら暮らす人々の営み、そんな "ありのままの風景" を作品としている建物のない美術館です。
白い砂浜が4kmに渡って広がっています。
ここが砂浜美術館と命名された際、以下のやりとりがあったそうです。
「私たちの町って何も無いよね」
「いや、何も無くはないんじゃない。ここには美しい砂浜がある。昔ながらの風景がある」
この美術館には建物はない。でも作品は町にあるものすべて。
この砂浜美術館は1989年に設立しました。
当時の日本はバブルまっさかり。SDGsが叫ばれる以前です。
今から思えば、ここは時代の先端を行っていたとも言えますね。
ここでのSDGsプログラムのひとつが「ビーチコーミング」
ビーチは砂浜、コーミングは櫛(くし)です。
砂浜を歩いて打ち上げられているものに目を凝らします。
打ち上げられたものには、種子、ライター、歯ブラシ、瓶、椰子の実、タツノオトシゴ、漁網、などがあります。
それらを単なるゴミと見るのではなく、ストーリーを感じさせるものを拾って作品にします。
正解はありません。視点は人それぞれ。
「これなんだろう」「どこから流れついたんだろう」と見ていくと漂流物からいろいろな発見があります。
見方、考え方を変えるだけで素敵に見える。
砂浜美術館が教えてくれるのはそういうことです。
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砂浜をコーミングしていると時間を忘れます。こんな気持ちで砂浜を歩いたのは初めてでした。
私が拾ってきたもので作った作品がこちら。
はてさて私はどんなストーリーを感じたと思いますか?(わかんないかな~)
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四万十学遊館トンボ王国
トンボ王国は「学遊館あきついお」と「四万十トンボ自然公園」で構成されている世界初のトンボ保護区であり、これまでに81種のトンボが見つかった日本一のトンボ保護区です。
訪れた日は生憎の雨でトンボ自然公園内を歩くことはできなかったのですが、あきついおトンボ王国内でトンボに関するお話を伺いました。
- トンボはなぜ日本から激減したのか
- トンボはなぜ「川の掃除屋さん」と言われているのか
- 木から落ちた落ち葉(枯れ葉)が川に落ちても、なぜ汚れたり臭くなったりしないのか
- トンボやそれにつながる生態系が崩れるとどういうことが起こるのか といったお話をたっぷり聴くことができます。それを聴くと唖然としてしまいます。
この杉村さんのお話が熱いのです。
杉村さんはなんと小学2年生の時からトンボの研究をしておられるそうです。
世の中がSDGsと言いだしたからトンボの保護を始めた人じゃないんです。
もう筋金入りのトンボ専門家です。トンボ愛がすごい!
この記事に書いてあることの100倍くらい中身の濃いお話を聴けるので、ぜひぜひ現地で聴いてください。
あきついおの中で体験した「生き物探し推理ゲーム」が、大人でも思わず夢中になってしまうくらい面白くて熱中しました。
砂浜美術館のビーチコーミングと同じように時間を忘れて没頭しました。
楽しく学べる、そんな感情を初めて感じたかもしれません。
大人の方もぜひ味わってほしい体験です。
トンボ王国は令和6年3月18日に環境省によって「自然共生サイト」に認定されました。
民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域と環境省が認定したのです。
柏島
高知県の南西部 宿毛湾の南に突き出た大月半島の先端に位置する柏島。
豊後水道と黒潮の流れがぶつかる海域に面しているため、日本の海の1/3の魚種(約1,150種)が生息しているともいわれるほど魚が豊かな場所で、世界でも有数のダイビングスポットとして知られています。
最近ではSNSで「船が宙に浮いて見える」ほど透明度が高いエメラルドグリーンの海が話題となり、注目の観光スポットとなりました。
左の大月半島と橋でつながっている右の先端に見えるのが柏島です(写真は晴天時)(写真提供:幡多広域観光協議会)
この日は生憎の天候で目の覚めるようなエメラルドグリーンは見られませんでしたが、この竜が浜からはわずかに青色が見えました。
竜が浜からもっと下った白浜に下りました。
う~ん、天気が恨めしい。。。
砂浜に打ち上げられたものを見てみます。
小さな貝がたくさんみえます。
ここ柏島には微小貝という貝が見られます。
微小貝とは貝の種類ではなく大きさが1mm以下の小さな貝の総称です。
見るとなんてことない貝がらですが、この微小貝が見られる海はきれいな海(水が良い)だという証明になるそうです。
柏島でSDGsの体験をした場所がこの「黒潮実感センターうみのがっこう」です。
実感センターっていうネーミングがまたいいですね。
このうみのがっこうでお話を伺ったのは黒潮実感センターのセンター長でもあり、柏島のおさかな博士と言われる神田 優先生。
左奥が神田先生です。
高知大学から東京大学大学院で水産学を専攻、研究されている農学博士です。
神田先生は1998年から単身で柏島へ移住され研究を続けておられます。
この神田先生も25年ほど前からずっと活動を続けておられる海の専門家です。
とても美しいと言われているこの柏島も汚染にさらされています。それがマイクロプラスチックごみ。
砂浜に打ち上げられるゴミは大きいものだけではなく、実は5mm以下のマイクロプラスチックごみの方がさらに深刻な問題なのだそうです。
先ほどの白浜の貝殻を砂ごとすくってバケツに入れ、水を入れると砂や貝は沈みますが、軽いプラスチックは浮いてきます。
私も自分自身の目で見ましたが、たくさんのマイクロプラスチックごみが水に浮いてきました。
大きなゴミより小さなプラスチックごみの方が厄介な問題だという理由のひとつは、魚が餌と間違えて食べてしまうこと。
プラスチックは安価で便利ですが分解されないのでずっと消えません。
またプラスチックには有害物質が付着しやすいという特徴があるそうで、魚たちが餌と間違えてプラスチックごみを食べる、そして消化されないままの魚を私たち人間が食べる。
海鳥のお腹を開いてみたら、中はプラスチックごみだらけだったという写真を見てぞっとしました。
こんなにきれいで透きとおっている美しい海にも汚染の波は及んでいたのです。。。
ここからは晴れている時の柏島の様子をご覧ください。
竜が浜からの風景。キャンプ場が併設され、夏は大人気だそうです。
これがSNSでブレークした「空に浮かんでいるように見える船」です。
柏島のすごいところは、これらの風景が海の沖ではなく湾、漁港のすぐそばで道路から見られることです。
微小貝を拾った白浜も晴れているとこんな感じで別の場所のようです。海水浴場でもあるので夏場はかなり賑わうそうです。
神田先生は仰います。
「柏島は島がまるごと美術館です」
水の透明度はなんと20~30m。
柏島は漁師町でもあり、懐かしい風景に包まれてのんびりしたところです。
集落を歩いているとこんな看板を見つけました。
高知県は南海トラフの重要地域でもあり津波避難に対する意識が高く、避難場所の案内板をあちこちで見ましたが・・・
なんと避難場所に「田中さんの畑」笑。
ちなみに現在は田中さんはいらっしゃらないのだとか。
面白いですね。