『経済財政運営と改革の基本方針2024』から

いわゆる「骨太の方針」の一環として、『経済財政運営と改革の基本方針2024』(『基本方針』と略称)、その『政策ファイル』、『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2024年改訂版』(『グランドデザイン』と略称)、そしてその『基礎資料集』が、閣議決定後の6月21日に公表された。

この4点セットがこれから1年間の政府方針の根幹になるのだが、自民党内の権力闘争如何では別の内閣が9月に誕生するかもしれない。ただそれでもこれらは、今後の日本を考えるうえで検討しておく価値がある内容を含んでいる。

普遍性がもつ有効性と限界

かりに岸田内閣がこれらの実行責任を果たせなくなっても、近未来の日本社会、経済、政治、文化などをどのように構築していくのかの指針としては有効であるから、専門の社会学に限定しつつも、そのもつ普遍性がもつ有効性と限界についてまとめておきたい。

地方創生及び地域における社会課題への対応

まずは『基本方針』のうち、「5. 地方創生及び地域における社会課題への対応」をみてみよう。

地方創生というテーマ自体は第一次安倍内閣以来だから、すでに10年以上課題となってきた。「まち、ひと、しごと」を同時に政策対象とする課題でもあり、その重要性は変わっていない。

「デジタル田園都市国家構想と地方創生の新展開」

(1)「デジタル田園都市国家構想と地方創生の新展開」から始めるが、「田園都市国家構想」は昨年度も登場した概念であり、本年度も無定義のままに踏襲された。

肝心のキーワードを無定義で使うことは学術研究ではもちろんありえないが、行政計画でもそれは避けたい。なぜなら、せっかくの「デジタル田園都市国家構想」が正しく国民に伝わらないからである。それでは賛成するにしても反対するにしても、意見の幅広い展開が出来なくなる。

デジタル田園都市国家構想

『基本方針』における「デジタル田園都市国家構想」とは、①デジタルの力を活用して、②地方創生を加速させ、③必要なサービスが持続的に提供される地方生活圏を形成して、④そのような地方と東京の相互利益となる分散型国づくり(:23)をイメージしている。

そこまでにいたる道は、①急速な少子高齢化・人口減少、②東京の一極集中、③地域の生産年齢人口の減少、④日常生活の持続可能性の低下などへの対応が不可避となる。どれも日本が抱える構造的難題であり、短期間で決着はつかないので、むしろ30年という時間の「世代間連携」で対処するしかない(金子編、2024)。

とりわけ「デジタル田園健康特区」や「連携“絆”特区」への期待が書き込まれているが、どのような内容でそれを実行するかという政策上の方法論が不明なために、その先が描けない。『基本方針』の欠点の一つがここに象徴されている。