居住ニーズが少ない分、資産価値の下落は激しい

 買った部屋をどう使うのか。彼らにはあまり住むという目的はない。お客様をもてなすための迎賓館、地元の仲間たちを呼んでのパーティー、会社の福利厚生施設としての利用などが中心となっているという。どちらかといえば、今後あまり経済的な発展が見込めない地方都市で、超高額のマンションを買っても、将来大きな利益になるとは思えない。ましてや賃貸で運用しようにも、そんなニーズが存在することは期待できない。それでもかまわないのだ。タワマンという城の天守閣を手に入れること自体に目的があるのだから。

 現在、ディベロッパーが企てるのは、人口が20万人から30万人程度の地方主要都市でのタワマン供給だ。タワマンは概ね人口10万人あたりで1~2棟程度の需要があるといわれている。該当する主要都市に最初に建設の槌音を響かせれば、確実に需要が見込めるというわけだ。そうした意味では、ディベロッパーも地方都市でのタワマン戦争の先陣を切るべく日々戦っているのである。

 だが、建物は有限。地方都市でこれから20年、30年と時代が進む先に待つ未来でタワマンの価値が保たれる保証はない。地方豪族の命も有限である。居住ニーズが少ない分、資産価値の下落は激しく、主を失ったタワマンの廃墟化は意外に早いのかもしれない。

(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

提供元・Business Journal

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