■ニコラス・フラメルは今もどこかで生きているのか
17世紀初頭、ニコラスの子孫にあたるデュボアという男が、ニコラスの秘密のいくつかを継承し、鉛から金を作ることができたと主張した。これを聞きつけたリシュリュー枢機卿はデュボアからその秘密を入手しようとし、最終的にはデュボアを投獄して「アブラハムの書」を没収した。しかし枢機卿には本の内容を何ひとつ理解することはできず、本を放り出し、その後本の所在は不明になったという。
同じく17世紀には、ニコラス・フラメルの錬金術の技能についてさまざまな著作が突然として登場しはじめ、ニコラスが書いたとされる著作も登場して話題となった。いわば“錬金術ブーム”に湧く中で、中世の知の巨人、アイザック・ニュートンですら研究日誌『カドゥケウス、フラメルのドラゴン』の中でニコラスの錬金術について言及していたほどだ。
すでに故人であるはずのニコラスだが、17世紀になってからもまことしやかな目撃情報が報告されるなど、賢者の石を作成し不老不死の技法を編み出した彼は今もどこかで生きているのではないかという“都市伝説”が噂されるようになったのである。
ニコラスがトルコで目撃されていることから、ルイ14世が調査団を派遣してニコラスを捜索する事態にまで発展した。調査団を指揮していた考古学者のポール・ルーカスは、その期間中にある哲学者から、ニコラスと彼の妻は賢者の石を使って不老不死の秘術を活用したのだと知らされたのである。
この哲学者によると賢者の石の秘術があれば、人は何千年も生きることができるという。ニコラスと彼の妻の両方が不老不死を達成し、彼ら自身の死と葬式を偽装し、そしてインドに移り住み今も存命であるというのだ。
ニコラスは本当に死を克服して今も生き永らえているのか? もちろんそれは本人と彼の妻以外には誰にも知り得ない。なぜなら証言できる者の寿命が先にやって来てしまうからだ。
ニコラスはさまざまなフィクション作品で言及され、現代のポップカルチャーへの道を歩み、ベストセラー小説『ハリー・ポッターと賢者の石』とその映画化作品に登場し、その後何世紀にもわたって錬金術の世界のアイコンであり続けている。スピンオフ映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018年)に登場したニコラスも話題になった。
ニコラス・フラメルは確かに実在の人物であったが、不老不死の技法を見つけ出した卓越した錬金術師であったのかどうか、今のところは誰にもわからない。しかしニコラス・フラメルが死後、歴史上に名を残した人物であることは間違いない。ニコラスが今もどこかで生きているのだとすれば、その年齢は実に694歳となる。そのあまりにも壮大なスケールの物語には眩暈を禁じ得ない。
参考:「Mysterious Universe」ほか
※当記事は2021年の記事を再編集して掲載しています。
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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