彼はまたジェームズ・レッドフィールドによる人気のニューエイジ思想書『The Celestine Prophecy』(邦題『聖なる予言』角川書店 )に深く傾倒し、神秘的なエネルギーフィールドの存在と、振動を利用して人生を変えより高い次元に上がることに強い関心を抱いていたという。
すっかり“スピリチュアル”な人物になってしまった当時のクレイマーだが、1995年2月に彼と一緒にハイキングに行った妻のジェニファーは次のように振り返っている。
「私たちは我が家のそばの丘の頂上までハイキングに行きました。頂上から下を見渡せば、私たちが住んでいる街全体を見ることができます。近くの大学に属する丘の上には十字架がありました。そして彼は十字架を指さし『ほら、ハニー、私たちの家はこの十字架の道にある』と言いました。彼は日常生活のすべてに神聖な意味を見いだしていたのです」(ジェニファー)
このハイキングの翌日にあたる1995年2月12日、クレイマーは自動車を運転して義父を訪ね、その後、ロサンゼルス国際空港へ取引先の投資家であるグレッグ・マティーニとその夫人を迎えに行った。
夫妻の乗った旅客機が到着するずいぶん前に空港に到着したクレイマーは妻、仕事仲間、元アイアンバタフライのドラマーで親友のロン・ブッシーなど、さまざまな人々に合計17回もの電話をかけたことが通話記録から判明している。
電話を受けた者によれば、クレイマーは泣いていたようであり、強いストレスと恐怖を感じているようであったという。
その後のクレイマーの言動も不可解で、マティーニ夫妻をここで迎えずに後に夫妻が泊まるホテルに会いに行くと言ってみたり、妻には「大きな驚きがある」とほのめかし、自殺をするつもりであると口にしたり、O・J・シンプソンは無実であると主張したりしていたのである。そしてその後、クレイマーの消息はプッツリと途絶えることになる。