1990年代半ば、先進技術の開発に没頭するも謎の失踪を遂げた元ミュージシャンがいる。それは、1966年に結成された伝説のロックバンド「アイアン・バタフライ」の元ベーシストのフィリップ・テイラー・クレイマーだ。

■実業家、研究者としての第二の人生が急転直下の転落

 有名人やセレブの未解決事件は大きなニュースになり、人々の記憶に残る出来事となる。元ロックスター、フィリップ・テイラー・クレイマーのケースもまた実に不可解な事件だ。

 フィリップ・テイラー・クレイマーは、1974年から1980年にかけてロックグループ「アイアン・バタフライ」のベーシストとして活躍し、音楽活動からの引退後も成功したミュージシャンとして人々の称賛を受けていた。

【未解決】元有名ミュージシャン、禁断の発明によって“消された”? 謎の失踪と死「クレイマー事件」とは
(画像=フィリップ・テイラー・クレイマー 「Mysterious Universe」の記事より,『TOCANA』より 引用)

 音楽活動引退後のクレイマーは、異色の経歴を歩みはじめた。

 クレイマーは心機一転して大学に入り直し、航空宇宙工学の学位を取得。MXミサイルシステムの開発など、ペンタゴン(米国防総省)とのあらゆる種類の研究開発に携わった。また、コンピューターエンジニアリングにも深く関わり、数学とコンピューターの専門家としての名声も獲得している。

 1990年に彼はビデオ圧縮技術の先駆的な仕事に携わるベンチャー「Total Multimedia Inc」と「Soft Video Inc」という会社を共同設立した。

 その一方でクレイマーはかねてから興味・関心のあった超光速通信とワープ航法の理論的研究に着手した。実業家であり研究者でもあり、妻と2人の子どもに囲まれた家庭生活もまた充実したもののように見えたが、その先には暗雲が立ち込めていたのである。

 クレイマーの2つの会社が次々と経営破綻し、リストラの後に1994年に事業を再編。画期的なデータ圧縮技術の開発も道半ばにして中断を余儀なくされた。クレイマーが妻に話した内容によれば、その技術は行方不明の子どもの顔の写真をコンピューターに入力すると、数秒以内に何千人もの群衆の中からその子どもを見つけることができるアプリケーションソフトであったという。

 会社の経営破綻後数カ月で、クレイマーの行動は奇妙な方向へと変わりはじめた。彼は部屋に引きこもるようになった一方で、それまでのやや気難しい性格から自信に満ちた振る舞いを見せるようになったのだ。周囲の者に彼が語った発言は、たとえば次のようなものだ。

「神は完璧な科学者です! 混沌は完璧な秩序です」 「あなたは中心に置かれなければなりません。あなたが中心にいるなら、超新星爆発が起こって残骸が来ようとも、あなたは救われるでしょう」 「世界のすべての不思議を見て、それでもそれ自体が盲目である瞳の美しさから学びなさい。違いは昼と夜です」

 こうした発言をビジネスパートナーや妹、友人たちに口にしていたことが証言に残されている。