少女はその場で保護されて調査が行われたのだが、その過程で悲惨で信じがたいストーリーが浮き彫りになってきたのだ。
12年間収納ボックスに監禁
精神科の入院施設に預けられた少女は、便宜上、マーシャと呼ばれることになった。
マーシャは1977年にリュボフが生んだ子供であることが調査でわかった。つまり保護された時点でマーシャは12歳であったのだ。そしてリュボフが亡くなった今となっては父親を知る術はなかった。
長らく1人暮らしであったリュボフは周囲に妊娠を隠し通して自宅で独力でマーシャを出産し、役所に届けることなくこの収納ボックスの中で育てていたのである。
農家へ仕事へ行く時を含めて外出時には木箱に外から鍵をかけていたのでマーシャは外に出ることはできず、発見時までリュボフ以外の人間の目に触れることはなかったのだ。近所の人も職場の同僚も、すでに疎遠になっていた親族もマーシャのことは誰一人として知らなかったのである。
地域住民に多大な衝撃を与えたこの一件だったが、どうであれ身寄りのないマーシャは保護施設で暮らしていかなければならなかった。まったく歩くことはできなかったため必然的に車椅子での生活となる。
職員の尽力により最初はパンと牛乳以外のものは食べられなかったマーシャは次第にいろいろなものを口にするようになり、職員を含め周囲の人々と徐々に簡単なコミュニケーションが可能になっていった。