■ウクライナ戦争

2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した後、エルドアンはウクライナとロシアの仲介を果たすべく積極的な外交を展開した。侵攻の1ヶ月後の3月29日にトルコの仲介によってイスタンブールで停戦交渉が行われたが、このときの条件での停戦が最も好ましいものであったと、今でも私は考えている。

ところが、キーウ近郊のブッチャで民間人が多数ロシア兵に殺害されたことが明らかになり、停戦交渉は頓挫してしまった。

エルドアンは、スウェーデンのNATO加盟に反対してきたが、それはスウェーデンが、トルコの治安を乱しているクルド人武装組織の逃げ場になっていると考えていたからである。しかし、エルドアンは次第に態度を軟化させ、2024年3月にスウェーデンは正式にNATOへ加盟した。

ウクライナ戦争が長期化するに及んで、エルドアンの仲介外交も失速してしまった。外交で得点を稼いでいたエルドアンにしては、セールスポイントが減ってしまったことになる。