ゾンビドラッグとはどのようなドラッグか?

 2024年4月10日、キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)は、ゾンビドラッグが英国の違法ドラッグ市場で広まり、マリファナや電子タバコの偽物として流通していることを発表した。ゾンビドラッグは米国でも拡大中で、乱用による死亡例も相次いでいる。

 ゾンビドラッグの正体は動物用鎮静剤のキシラジンだ。中枢神経に作用し、鎮静や鎮痛、筋弛緩の効果をもたらす。馬や牛、猫などの動物に使用される薬物で、いずれの国でも人間への使用は承認されていない。米国では、コロナ禍の間、獣医の処方箋や医師のサプライチェーンからキシラジンが流出したとみられている。

 キシラジンは経口投与で分解するため、注射器を用いて体内に投与される。しかし、人間がキシラジンを注射すると、その箇所に皮膚炎や感染症を引き起こすことが多い。しかも、その箇所が腐り始める可能性があるため、「肉食ドラッグ」と呼ばれることもある。

 キシラジンとフェンタニルやヘロインなどのオピオイドを組み合わせた合成麻薬が「トランク」だ。キシラジンにはオピオイド拮抗薬のナルカンやナロキソンの効果を妨げる働きがあり、トランクは特に危険視されている。