フェアに言えば、「無理やりアピール的な削減」をしないで、将来にわたって無理なく実現可能な削減プランのスケジュール策定に力を注いだ…というのは、確かに悪いことではないようにも思います(追記なんですが、この記事がアップされてから、”石丸は安芸高田市で何もできてない”という風に読む人が結構いるようですが、そうではなくて、単なる点数稼ぎではない長期的に無理ないプランを作ろうとする良識があり、それをある程度形にする能力もある人なのだ、という点は強調しておきたいと思っています)。
ただ、それが本当に実行されていくのか、というのは結構難しいかもしれないですよね。その後辞めて抜けちゃったわけだし、議会には「アンチ石丸派」みたいな人が強くいる状態になってしまってもいるわけで…
この件がどうなるかは別として一般論的に言えば、やっぱり「本当に改革が実行される」ところまで行くには、「無駄な対立」を超えたところの協力を引き寄せる必要があるって話はありますよね。
この記事冒頭で私のクライアントの中小企業の話しましたけど、「敵対者のボス」にめっちゃ気を使って勇退してもらったおかげで、「敵対派閥」の人が主体的に参加してちゃんと知恵を出してくれる関係を維持できたんですよね。
そのおかげで、経営者側が出すビジネスモデル転換プランに対して「ちゃんと現場的に無理がない中身」を周知を集めて詰めることができたのが成功要因だったと思っています。
同じように、30%のハコモノを縮減していくとかなった時に、それをちゃんと「敵側」の人にも納得してもらって、その敵側に属する人の知恵も入れながら実行しないと、本当に「良くない予算削減」になっちゃうというか、コミュニティ的に非常に重要な部分を配慮なくカットしちゃう可能性が出てくる可能性がある。
意地悪くいうと「絵に描いた餅」的要素はあって、そういうプランは、将来的にやはりどこかでダダ崩れになって実現しない可能性も高い。
「敵対派閥のボス」は排除してもいいけど、「敵対派閥にいる”タイプの”人」の意見を取り入れないと細部の調整が本当の意味ではうまく行かない課題っていうのがどうしても出てくるところはあるんですよね。
「恥を知れ!」型の「劇場型政治」ではそこがうまくできなくて、だからここ以後はもうちょっとマイルドなタイプの市長に交代するほうが良かった状況だったと言えるかもしれません。
もちろん、好意的に言えば、「劇薬」として何が必要かを知らせる役割が石丸氏の代で、その後を継ぐ人がそれを「粛々と人間関係を密にしながら実現していく」役割というバトンタッチが理想とはいえるかも?
物事の実現には「思想家・革命家・実務家」が順番に必要だという話でいえば、「革命家」としての役割は終わったので、あとは「実務家」がちゃんと引き継いでくれれば・・・という感じなのかも?
4. 実は謎にやり手な小池百合子のステルス行財政改革(ただし密室感が生まれてしまう問題もある)「恥を知れ!」型の劇場型政治の限界とそれを超えるには?っていう問題は、蓮舫さんの問題も結構当てはまると思うんですよね。
蓮舫さんが民主党時代に「二位じゃ駄目なんですか?」とか言って事業仕分けをしてたような予算の組み換えはものすごい恨みを買って未だに揉め事の種になってますよね。(で、結局そういう改革は中途半端に終わらざるを得ない)
今回も、「外苑再開発」とかで事業者側が抱えてる事情とか一切無視して「巨悪を糾弾!」モードになってて、それが以下記事でちゃんとまとめているようにかなりの無理がある。
日本の大衆はこういう「公開処刑」みたいなのが大好きなんですが、それが本当に「適切な改革」に繋がるのか?をちょっと考えるべき時ではありますね。
というのは、今回調べてびっっっっっくりしたんですが、実は小池都政が謎にやり手な行財政改革を実現してるんですよね。
え?そんなイメージゼロだったでしょ?僕も調べてびっくりしたんですが。
小池都政が「子育て世代」に大盤振る舞いしてて支持率高いのは有名ですが、それを新たな税金的負担増なしにやりきったのはもうちょっと評価されていいと思います。
余談ですがさっきまで安芸高田市の財政資料見てると単位が「千円」とかで、例えば「プロドライバーを招いての市民の安全運転啓発イベント予算36万円」とかが計上されててすごい「オラが村の予算案」っていう感じだったんですが(笑)
東京都は大企業の財務諸表みたいに単位が「百万円」とか下手したら「億円」だし、総額は兆円レベルだし・・・と「独立国」レベルの予算という感じで目がくらみますね。
で、以下は東京都の財政資料からですが、実は小池都政は8兆円ぐらいの都政予算から2千4百億円ぐらい行財政改革で無駄を削減して引き出して、それであの充実した子育てサポート予算とかを手当してるんですね。
約8兆円から2400億円程度って3%ぐらいですが、これは私企業じゃない公的機関としては結構すごいドラスティックなことだと思います。
なんせ、あの子育て支援で有名な泉房穂市長時代の明石市が、子育て支援に使ったお金が予算総額の1.7%の見直しだったそう(泉氏の著書より)なんで、
え?百合子実は有能じゃね?
っていう(笑)
こんな感じで、確かに、案外調べてみたら百合子有能なとこあるよね、っていう感じではあるんですよね。元ヤフーの宮坂さんをDX担当にしてグイグイ手続きのDX化を進めさせたりだとかも。
とはいえ、ねえ?って思うわけじゃないですか。
え?また小池百合子?なんかもっと別の人いないの?って思うこの気持ちはなんなのか?
要するに、こういう感じの「実はやり手のステルス型改革」だと、どうしても密室感が出てきちゃうわけですよね。
で、なんか例の都庁プロジェクションマッピングが電通とのコネで…みたいな話はどこかには出てくる結果になっちゃう。
それに、石丸氏が「長期的視野でプランを作った」みたいな内容は、小池さんからはどう逆立ちしても出てこなさそうではある。
また、若い世代で「普通に議論して普通に物事を理性的に進めたい」みたいなタイプの人間からすると、討論会みたいな場面での小池百合子の妖怪みたいな振る舞いに対して拒否反応持ってる人も多くいるのはわかる。
私はコンサル業のかたわら色んな個人と「文通」をしながら人生を考えるという仕事もしていて(ご興味があればこちらから)、そのクライアントには20代から70代まで男女同数ぐらいの色んな人がいるんですが・・・
ある50代女性の文通相手によると、大学生の息子さんが
「やっとマトモに話せそうな政治家が出てきたって感じじゃん。あの国会で居眠りしてたり怒鳴ったりしてる自民党の老人よりよっぽど良さそうに思うけど」
って言ってたらしくて笑いました。
石丸さんの支持者が20−30代、小池百合子の支持者が40−50代、蓮舫さんの支持者が60代以上が中心・・・っていうデータもあるみたいなんで、だから今回の都知事選はどうあれ、日本社会はもっと「石丸さんのような能力」をうまく活用できるようになっていかないといけないわけですよね。
じゃあどうすればいいのか?という話は、「後編」の「小池百合子編」の記事でもっと深堀りしていこうと思います。(以下リンクからどうぞ)
一言でいうと、今は「メディアのレベル、国民の政治意識のレベル」が低すぎて、「公開」より「密室」じゃないとちゃんと具体的な議論が動かせない状態になってるんですよね。
これをいかに「オープンな議論でも現実的な積み重ねができる関係性を作れるか」がこれから大事になってくるのだ・・・という話を後編の「小池百合子編」ではしているのでぜひお読みください↑。
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つづきはnoteにて(倉本圭造のひとりごとマガジン)。
編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2024年6月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。