…とか言いまくる事自体はあまり良いことではないというのはまずあります。

なんか、居眠り程度のことであんな「公開処刑」みたいなことをしてしまったら延々と恨みが残るし、3万人ちょっとしかいない小さな市でそんな分断が生まれてしまったら本当に息の長い「改革」などできづらい・・・というのは明らかにある。

実際、上記の会社が「変わっていく」プロセスでは辞めてもらった高齢の役員もいたんですが、コンサルとして関わる僕以上にクライアントの経営者はめっっっっっっっっっっっっっっっちゃ気を使っていて、メンツをタテながら段階的に権限を削っていって最後は「勇退」していただく、みたいな感じだったんですよね。

正直、まあまあ都会育ち・外資系出身の自分からするともどかしい気持ちはあったんですが、クライアントの経営者は「田舎ではこうやらないと、社員が半分出ていったりしかねないんですよ」とか言っててめちゃリアリティがありました。

で、結果として、「大方針」は経営者側が出しつつも、細部の細部の部分では「反対派の人の知恵」も盛り込んでいくことで本当に「田舎町でも成立する変革」は実現したところがあるな、と私は感じています。

とはいえ!

じゃあ石丸なんかじゃ駄目だよね!っていう話がしたいんじゃなくて、個人的には好感持ってるしなんとか彼みたいな人を活かせる日本社会ではありたいと思っているんですが!という話を今回記事ではしたいので、石丸支持者の人も少し我慢して最後まで読んでほしいんですね。

2. 発信力は100点以上、実行力は70点(に結果的にならざるを得ない)問題

まず、今回の記事を書くにあたってはじめてちゃんと石丸氏の発信を時間かけて追ってみたんですが、彼の発信力はめっちゃすごいですね。

それも、なんかただ「はい論破!」的にメディアをぶん殴って見せるパフォーマンス的に浅はかなものだけじゃなくて、本質的にちゃんとごまかさずに正しく伝える能力があるっていうか。

そこはもうホント『本物感』がバリバリあって、ちゃんと「今必要なことをわかりやすく市民に伝える」能力は本当に超超すごかったです。

例えば、毎年財政説明会をやっていてYouTubeにあるんですが、「日本の地方行政の財政問題に関する、予備校の授業のようにわかりやすいレクチャー」としてはもう『完璧』といっていいものだった。

以下に2つ貼りますが、どちらもすごい良かったです。

普通にビジネスパーソンは「うちの社内会議がこれぐらい明晰に行われてるだろうか?」と考えてみるといいかも?(一部のかなり優秀な企業なら”標準的”あるいは”物足りない”と感じるかもですが、なんせ田舎の地方自治体の報告会でこんなの初めて見ました)

ただ一方で、じゃあ「行財政改革」の実行度においてはどうなんだ?っていうと…まあこれ、全部石丸市長のせいかっていうとそういうわけでもないんだけど、まあ、現時点ではそんなすごい「大改革」が実現したというわけでもなさそうではあるんですよね。

以下は令和6年度予算編成方針について、という安芸高田市の資料ですが、在職中に安芸高田市の財政力は一進一退というか、むしろ「ちょい悪化」ぐらいではある。

安芸高田市令和6年度予算編成方針について

上記記述の冒頭で、「過去2年改善していた経常収支比率」とありますが、これは石丸氏の超わかりやすい財政説明会でも説明されているように「積み立てすぎてた退職金を取り崩した」とか「コロナ関連で政府からお金もらった」とかなので、石丸氏の手柄というわけではないです。

YouTube財政説明会で石丸氏が細かく説明しているように、「ハコモノの維持費」が将来大問題になるためにそれを徐々に縮減していかないといけないんですが、石丸氏が就任する前の15年に「30%削減が必要!」と決めたのにだんだんおざなりになっていっていたのが、石丸氏の代でもものすごく縮減が進んだというわけでもなさそう。(ただし、”フェアに言うなら長期的な削減プランをある程度詳細に詰めるところまでは行った”ので、将来的にそれがそのまま実行されれば徐々に効いてくる可能性はあります)

あと、おそらく「財政再建」だけが大目標でそれに邁進してれば、もっと改善してた可能性は高くて、実は給食費の無償化(1億2千万)とか保育所での紙おむつのサブスクリプション(1億円)とか、小学校体育館の空調設備整備(1億7千万)とかにかなりお金使ってるんですね。

全体として「子育て関連」予算はかなり頑張って増やそうとした形跡が見られるんで、だから総額で見た時に「財政数字上あまり変わってないじゃないか」といっても中身はまあまあ変わっているとは言えます。

なんか、アンチ石丸派がアップしてる動画で突っ込まれてて面白かったのがあるんですが↓、中学生を集めて「生徒議会」をやった時に、生徒の一人が美術館の存続問題について質問したら突然石丸市長が給食費無償化の話をして激ヅメしはじめた・・・という事件があって。(雰囲気が伝わるので以下の動画再生してみてください)

この動画作成者が「何を言ってるんだこいつは」とかツッコミテロップ入れてますが、真面目な話をすれば石丸市長の中では(というか安芸高田市の財政状況をちゃんと見れば)ものすごく繋がってる話なんですよ。

色々と財政事情が苦しい中で、「子供向け予算だけはある意味潤沢につけようと頑張っている」という状況だったんで、本当に「アレを取るかコレを取るか」的な情勢になっていて、石丸氏は子育て予算の方を取るべきだ、という決断をしたという状況だったんですね。

3. 本当に改革を徹底して「実現」まで行くには、あと一歩「双方向的」になる必要があるかも?

要するに、「安芸高田市における石丸市政」の状況をだいたいで言えば、

発信力は百点満点以上、スーパー凄いし、しかもよくある「メディアで暴れて見せるけど無内容」みたいなんじゃなくてちゃんと本質的な内容に立脚した発信ができる能力がある。 一方で、「改革の実行度」みたいな話でいえば、子育て予算を潤沢に「使う方」はだいぶん増やせたけど、じゃあ実際「財政改革」の方はちゃんとできたかというと… 「将来的な削減プラン」は策定したけど、実現するかどうかはわからないし、そのうちなし崩しになる可能性も結構ありそうで、もっと良い事例も他の自治体ではあるかも?という感じ。

…ではありそうです。