化石燃料を捨ててはいけない
世界中で大学やベンチャー企業がこういう気候工学の実験をやっており、ビル・ゲイツなどが出資している。彼の個人資産1100億ドルでも5年ぐらい続けられる。このコストは世界のGDPの0.2%程度なので、日本が比例配分で負担すると1兆円ぐらいである。脱炭素化に比べると、桁違いに安い。
成層圏にまくので大気汚染の心配はなく、急に止めると温度が上がるリスクもあるが、人工知能で制御できる。そういうシミュレーションも行なわれている。人工的に気候を変えるのは不自然だとか気持ち悪いとかいう感情論もあるが、散布するのは成層圏だから、普通の人は気づかない。
いま世界規模で行なわれている脱炭素化の大騒ぎのほうがよほど不自然で有害である。気候工学の技術はSAIだけではなく、脱炭素化と併用することもできる。環境団体が批判するのは、彼らのやってきた脱炭素化運動が無駄になるからだ。
今は「気候危機」ではないので気候工学は必要ないが、本当に温暖化の被害が拡大したら採用するオプションとして準備すべきだ。気候変動は文明の危機でも資本主義の宿命でもなく、大気をいかに冷やすかというテクニカルな問題にすぎないので、化石燃料を捨てるべきではない。
今週金曜からのアゴラ経済塾「脱炭素化は地球を救うか」では、このように環境問題を解決する合理的な方法を考えたい(申し込み受け付け中)。