なぜ石丸氏の発言が市の責任になったのか?国賠法とTwitterアカウントの投稿の外形
では、なぜ石丸氏の発言が市の責任になったのか?
これは国賠法に以下書いてあるからです。
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。 ② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
Twitterでの投稿が「その職務を行うについて」と認定されたのは、Twitterアカウントからの当該投稿の外形が3市長としてのものだと認定されたからで、公式アカウントか否かは関係ないとされました。
ただし、これは国や公共団体に責任を認めることで被害者が賠償を受けられるようにするためのものなので(損害を与えた公務員個人の懐が寒い場合には取りっぱぐれるが、国や公共団体ならその心配は無い)、国賠法1条2項により、市は石丸氏に対して求償権を有しています。
なお、なぜか安芸高田市は国会議員の免責特権に関する判例を引用して石丸市長の議会内での発言の違法となるハードルを引き上げようとしていましたが、退けられています。45
まとめ:石丸市長「恫喝」訴訟は真実性が認められず安芸高田市の責任となったが石丸個人に求償権行使するか広島地裁判決は国賠法上の違法性について以下判示しています。
(2)本件議会内発言及び本件各投稿の国賠法上の違法性
ア 本件議会内発言について
普通地方公共団体の長が、議会における答弁や発言において、どのような形でこれを行うかについては、普通地方公共団体の長の政治的判断を含む一定の裁量が存在するというべきであるから、普通地方公共団体の長の議会における当然や発言について国賠法1条1項にいう違法があるというためには、発言の動機、目的、内容及び発言態様等を考慮し、普通地方公共団体の長としての政治的判断を含む一定の裁量を逸脱したと言えることが必要であると解すべきである。
これを本件についてみると、本件議会内発言は、上述のとおり、原告の名誉を毀損するものであって、原告が本件発言をしたという事実が真実であるとはいえず、同事実が真実と信ずるに足りる相当の理由があるといえる状況でなされたものともいえない上、原告が本件発言をしたか否かは、政治的判断が必要となる事項でもないことに鑑みれば、本件議会内発言は、被の市長としての裁量を逸脱したものといえ、国賠法1条1項にいう違法な行為があったものといえる。
本件各投稿についても同様の判断が下されています。
市長が変われば市は石丸氏個人に対して求償権を行使するかもしれません。
また、市長が変わらなくとも、住民訴訟によって、やまね議員に支払った金額分について「市に対し、石丸伸二氏に対して求償権行使をすることを求める請求」をする可能性があります67
なお、控訴されており広島高裁の判決が7月に出るようです。
1:この5つが広島地裁の判決文中では「本件各投稿」とされた 2:12日に石丸氏がやまね議員への追及を終わると宣言したにもかかわらず追及を続けたため 3:外形基準(最高裁昭和31年11月30日判決昭和29(オ)774民集第10巻11号1502頁 4:「その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情」:最高裁判所第三小法廷判決 平成9年9月9日 平成6(オ)1287 民集第51巻8号3850頁 5:地方議会議員に関してもこの場合に限って公共団体の責任を認めるという法理を採用している例もあるが⇒地方議会での名誉毀損と司法審査:行橋市の小坪慎也議員に関する徳永議員による爆破予告犯「ヘイト議員」便乗動議提出・決議について – 事実を整える、最高裁は未だ判断を示したことはない 6:裁判例:大分地判平成28年12月22日:地方自治法242条の2第1項3号4号 7:現職市長に対する求償権行使をするよう認められた例として東京都国立市の上原公子の例が有名⇒国立市マンション訴訟事件の上原公子の妨害行為:小池百合子都知事の先例か – 事実を整える