米国の原子炉技術の輸出を承認するプロセスを改善するよう米エネルギー省に指示。

そういえば、 2024年3月にTerraPowerはNRCに先進的原子炉の建設許可の認可申請をした。米エネルギー省の先進原子炉実証プロジェクト(ARDP)に選ばれたのも TerraPowerとX-energyだった※5)。

どこまでスピードアップできるかは疑問が残るが、注目しておきたい。

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今週の下院は、2025年の年度予算をいくつか進める可能性があるようだ。ただ、総選挙前なので上院が動くことはないと思うので最終的に9月末につなぎ予算を可決して来年の議会で決めさせることになると思われる。

ただ、下院共和党の年度予算の内訳と採決はよくみておいたほうがいいと思っている。2024年総選挙で上下院は共和党が勝利する可能性が高いと私はみているので、今回だされた予算が来年また出される可能性が高いからだ。

今週も最高裁の動きに注目

米最高裁の法廷は10月第1月曜日にはじまり、6月下旬または7月上旬まで続く。今年のカレンダーを見る限りは、6月末までとなっている。6月下旬に重要な判決が集中する。まずは、先週の振返り。

1. 最高裁は特定の外国法人に出資した含み益への課税を合憲とする判断を示す(Moore v. United States)

まず、Moore v. United Statesについて。

ムーア夫妻は2005年にインド法人KisanKraftに4万ドルを投資し、株式の13%を取得。その後、配当金・分配金は受け取らず、同社に再投資していた。そして、2017年にトランプ政権および米議会はトランプ減税(Tax Cuts and Jobs Act)が成立。税制改革の一つである、外国法人に対して少なくとも10%の持ち分を有する米国人に、1回だけ適用される強制本国環流税(MRT)が成立。1986年以降の利益に遡ることが盛り込まれている。

原告であるムーア夫妻は、この課税のせいで約15,000ドルを支払わなければならなくなった。保守系団体の援助を得て、この税金の払い戻しを求めて連邦政府に訴訟を起こしていたのだ。

判決としては、7名の最高裁判事がこの課税は合憲であると判断した。

しかしながら、含み益への課税を合衆国憲法は合憲としているとまでの判断は示さなかった。むしろ、含み益への課税が合憲かどうかは、未解決の問題のままだと多数意見で主張している。

一方で、Vox※6)では一歩踏み込んだ記事を書いており、今回の意見書は、未実現利益への課税(通称:富裕税)はほぼ不可能だということを示唆しているとした。直接税は州の人口に応じて配分されると合衆国憲法修正第16条で定められているため、憲法に違反しない設計は困難を極めるとのことなのだ。また、カバノー判事は議会がそもそも未実現利益に対する課税権限を保有しているかに対しても疑問視する見解を述べている。

ウォーレン上院議員(民主党)をはじめとしたプログレッシブ議員は、かねてから富裕税(未実現利益に対する課税)を推進してきていた。仮に、民主党が近い将来オールブルーを実現できたとして、現在の最高裁判事の構成では違憲判決を出す可能性が高いということだろう。

2. 今週に発表されるかもしれない重要判決

最高裁のカレンダーによると、次の意見発表は26(水)に設定されている※7)。まだ未解決で重要な発表が残されている。バイデン大統領とトランプ氏のテレビ討論会が27日21時~(東部標準時間)に開催されるので、その前日に重要判決が出てくることになるだろう。

① トランプ氏の大統領免責について(Trump v. United States) ワシントンD.C.巡回区控訴裁判所は、トランプ氏には免責がないとし、現職の大統領に適用される刑事免責は元大統領には適用されないという判決を下している。

それに対して、トランプ氏は、大統領には免責があると上告した。4月の口頭弁論では、 全面的な訴追免除に判事らは懐疑的な見方を示す一方で、結論が長期間先送りされる可能性を示唆していた※8)。

② 政府権限の縮小につながる訴訟(Loper Bright Enterprises v. Raimondo; Relentless v. Dept. of Commerce) 1984年に政府機関の制定法の解釈が妥当である限り、裁判所は連邦省庁の解釈に従うべきだと最高裁が判決をだした。これにより、曖昧と受け取れる解釈であったとしても、裁判官は政府機関の解釈に従う傾向が強まってきた。

多くの最高裁ウォッチャーは、最高裁がシェブロン定理を明確に覆すのか、全面的に覆すというよりは、範囲を限定して覆すかどうかだ※9)。

③ バイデン政権のSNS企業への接触について LA州とMO州の州司法長官および5名のソーシャルメディアユーザーが、バイデン政権がSNS企業に対してコンテンツの管理を行うよう過剰に圧力をかけたとして訴訟された。

連邦当局はSNS企業に対して政府が潜在的に危険と見なした内容を削除するよう「強制」したとしており、憲法修正第1条の言論の自由が侵害されていると原告は主張している。削除を依頼した内容としては、COVID19に関するものや、大統領選挙の結果に関するものがある。

④ FL州・TX州法の SNSに関連する法律 FL州とTX州は、政治信条に基づいてユーザーの投稿が編集または削除された理由についてユーザーに個別に説明することを義務付ける包括的な法律を制定。

Tech業界団体のNetChoiceとComputer and Communications Industry Association(CCIA)は、この法律は民間企業の憲法修正第1条の権利を侵害しているとして異議を申し立てた。両団体は、民間企業がどのような言論を受け入れるかを政府が決めることは許されないと主張して訴訟をおこした。