イラストレーターのみふねたかし氏が手掛け、クセのないやわらかなタッチとシチュエーションの豊富さでフリー素材の代名詞的な存在となっている「いらすとや」。

 街中の看板やポスターなどさまざまな場面で使用され、もはや目に入らない日はないほどの勢いですが、そんな「いらすとや」の使用事例を調査しているマニアがいます。

「いらすとや」が街に浸透していく様子を見つめたい

 「いらすとや使用例マニア」として活躍する三浦靖雄さんは、会社員として働くかたわら、街中で使われている「いらすとや」の使用例を調査。発見した使用例とその場所をGoogleマップに紐づけ、「いらすとやマップ」として公開しています。

いらすとや使用例マニアが「いらすとやマップ」を作成 1400件調査して見えてきた注目傾向
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 三浦さんが「いらすとやマップ」を作り始めたきっかけは、それまでネット内での使用が主だった「いらすとや」の絵が、ある頃から現実世界でも見かけるようになった気づきだったそうです。

 「スマホが普及していったときのような、世界の大きな変わり目に直面しているんじゃないか」と考え、「いらすとや」の使用例から「浸透の様子を見つめたい」と、このユニークな使用例収集が始まったそうです。

いらすとや使用例マニアが「いらすとやマップ」を作成 1400件調査して見えてきた注目傾向
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 これまでに見つけた使用例は、なんと1400件以上。空いた時間や休みの日を使って探しているといいますが、それにしてもものすごい量です。いったいどうやって……。

 「当初はたまたま出かけた街や旅行先で探していたのですが、趣味として楽しむにはそれだけでは観測例が全然足りないなと。なので今は休日に『今日はいらすとやを探す日』と決め、知らない街へ出かけてしらみ潰しに歩いて探しています」(三浦さん)

 探し方のコツは、まず「街の不動産屋」に行くことだといいます。不動産屋の店頭では、高い確率で使用されており、必ずチェックする場所なのだそう。そして複数のエリアが道で結ばれているような中規模公園もチェックするポイント。8割を超える確率で見つけることができるといい、市街地から少し離れていても必ず探しに行くそうです。

街中の「いらすとや」使用例、もっとも多かったのは……

 三浦さんいわく、これまで調査してきた中でもっとも多かった使用例は「監視カメラや防犯カメラ」のイラストで、1400例中28例。ちなみに2位の「灰色の鳩」は8例と少数だといい、突出したニーズの高さが浮き彫りとなっています。

いらすとや使用例マニアが「いらすとやマップ」を作成 1400件調査して見えてきた注目傾向
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 「『防犯カメラ設置中』という文言とともにイラストが添えられていることが多いですね。ここに防犯カメラがあるぞ、ということを伝えて抑止力にするには、文字だけよりもイラスト付きのほうが目に留まりやすいということなのでしょう」(三浦さん)

 そして、2位の「灰色の鳩」は、「鳩に餌をあげないで」というお願いの看板に使われており、駅前に多いとのこと。8個で多いと言ってよいのかどうか、というところは疑問も残りますが、三浦さんはその背景にある大事なポイントを指摘します。

 「『いらすとや』には2万5000個以上の素材があるので、同じ素材を街で2回以上見かけることそのものがレアなんです。そう考えると、8個も見かけるってすごくないですか? さらに『監視カメラ』は28例ですから、その数字の異例さがわかると思います」(三浦さん)