5月3日に北米マイアミでワールドプレミアされたフェラーリ「12Cilindri」がいよいよ日本初公開。 “12気筒”をその名に戴く最新のフェラーリとはどんなモデルなのか? 詳細に迫る。
ユニークな車名が意味するもの
「12Cilindri(ドーディチ チリンドリ)」──イタリア語でズバリ“12気筒”を名乗るフェラーリの最新モデルが日本初上陸を果たしました。実質的に「812スーパーファスト」の後継となるフロントエンジン・リア駆動(FR)の2シーターGT(グラントゥーリズモ)です。
フェラーリジャパンのドナート・ロマニエッロ社長は、ジャパンプレミア会場で同車について「最高峰のパフォーマンス、快適性、そして美しいデザイン性を求める方にとって魅力的なモデルです」と紹介。
また、ジャパンプレミアのためにマラネッロ本社から来日したプロダクト マーケティングの責任者であるエマヌエレ・カランド氏は「1950、60年代のフェラーリのV12グラントゥーリズモが、自宅からサーキットへ自走し、サーキット走行を楽しむようなジェントルマンドライバーに愛されたように、現代のジェントルマンドライバーのニーズに応えるモデルが12Cilindriです」とコメントしました。
つまり当時のフェラーリ製V12グラントゥーリズモと同様に、スーパースポーツとしてのパフォーマンスとGTとしての快適性やエレガントなスタイリングが1台に凝縮したモデルが12Cilindriなのです。
それにしても車名が“12気筒”とはあまりにもストレートですが、そこは創業以来、珠玉の自然吸気V12エンジンをつくり続けてきたブランドとしての矜持なのでしょう。
本を正せばアルファロメオのワークスドライバーであったエンツォ・フェラーリが自らの名を冠した自動車メーカーを立ち上げたのが1947年のこと。同年、処女作として世に送り出したのが1.5リッターV12エンジンをフロントミッドに搭載した「125S」でした。
エンツォは生前、「12気筒エンジンを搭載するすべてのモデルは、フェラーリのオリジンである125Sの派生モデルだ」と語りました。125Sと同様にV12ユニットを戴くFRモデルといえば、「250GTO」(1962年)、「275GTB」(64年)、「365GTB4 “デイトナ”」(68年)をはじめ、そうそうたる名車が名を連ねます。12Cilindriはその直系であり、まさにフェラーリのDNAを象徴するモデルなのです。
フェラーリの魂ともいえるV12ですが、厳しさを増す排ガス規制や騒音規制により、存続が危ぶまれているのも確かです。フェラーリファンの間では、「812スーパーファストが最後のV12フラッグシップモデルになるのでは?」と見る向きも少なくありませんでした。
実際、V8ターボ ハイブリッドの「SF90」、V6ターボ ハイブリッドの「296」などフェラーリがモデルラインアップの電動化を推し進めているのも事実です。
そんな中、自然吸気V12エンジンの最新モデルが登場したわけですから、いかに逆風が吹こうとも血統を絶対に絶やさないというフェラーリとしての決意を感じざるを得ません。
「V12エンジンは私たちフェラーリにとってまさにDNAに他なりません。現在は2026年まで有効なユーロ6Eの規制をクリアしていますが、私たちのV12モデルを愛するお客様がいるかぎり、開発し続けていきたいと考えています」
そんなエマヌエレ・カランド氏の言葉からも、V12モデルがフェラーリにおいていかに重要な意味を持つか分かります。
クラシックかつスペイシーなエクステリアデザイン
では、12Cilindriは812スーパーファストからいかなる進化を遂げたのでしょうか?
まずスタイリングですが、「従来のフェラーリのミッドフロント・エンジンV12モデルのスタイリングルールを大胆に書き換えることを目指した」(プレスリリース)とフェラーリが謳う通り、812スーパーファストとの連続性を感じさせるデザイン要素は見当たりません。
全体的になめらかな曲面で構成されたロングノーズ・ショートデッキの流れるようなフォルムは、極めてクラシカルな印象。特にフロントまわりは左右にブラックアウトされたベルトラインが施されていて、365GTB4 “デイトナ”を彷彿させます。
とはいえ、12Cilindriのエクステリアデザインが懐古主義的かといえば、そうではありません。前出のエマヌエレ・カランド氏が「70年代スペースエイジのSF的な世界観からもインスピレーションを得ました」と語る通り、未来的でもあるからです。
その際たる例が、キャビンからリアエンドにかけてのデザインです。ルーフ後端からリアウィンドウ、そしてリアデッキにかけて、超高速旅客機「コンコルド」のデルタウィング(三角翼)形状にブラックアウトした大胆なグラフィックが施されていて、後方から12Cilindriを眺めると、どことなく宇宙船を思い起こすのです。
「過去のヘリテージを未来へとつなぐデザインなのです」とはエマヌエレ・カランド氏の弁ですが、実車を目の当たりにするとまさに言い得て妙だと感じます。
こうした大胆な意匠を壊さぬよう、リアスポイラーの代わりにリアスクリーンと一体化した左右2つの可動フラップが採用されました。これは60km/hから300km/hの間で作動し、最大で50kgのダウンフォースを発生するとのことです。
それにしても、なぜかくも812スーパーファストとは異なるデザインアプローチがとられたのでしょうか?
812スーパーファストがデビューした当時、同車はフェラーリのラインアップで最もハイパフォーマンスを誇るモデルでした。しかし、現在は1000cvを誇るハイブリッドスーパースポーツ「SF90」がその座を奪いました。そこで、12Cilindriではスポーツ性だけを伝えるのではなく、より洗練されたアプローチを模索することになったのだと、エクステリアデザインの責任者であるアンドレア・ミリテッロ氏は語っています。
一方インテリアは、「ローマ」や「プロサングエ」と同様に「デュアルコックピット」が採用されました。キャビンはドライバーとパッセンジャーの2つのモジュールから成るほぼ左右対称のレイアウトで、非常にクリーンな空間に仕上げられています。
インストルメントパネルには15.6インチのドライバー用ディスプレイに加え、中央には10.25インチのタッチスクリーン、助手席側には8.8インチのディスプレイが備わるなど、インターフェイスがデジタル化されたのも「プロサングエ」の延長線上にあります。
エクステリアと同様にインテリアも、レーシーさが前面に押し出された812スーパーファストに対し、スポーティさとラグジュアリーさが程よく同居した印象を受けます。
リサイクルポリエステルを65%含むアルカンターラをはじめ、サステナブルな素材を幅広く採用しているのも現代のモデルならではといえるでしょう。
大きく進化したV12エンジン
では、肝心のV12ユニットはどうでしょうか。2002年に登場したスペチアーレモデル「エンツォ」に搭載されたのが、Vバンク角が65度のV12ユニット「F140」型です。そして12Cilindriには、その最新進化版「F140HD」が与えられました。
6496ccという排気量は812スーパーファストと同様ですが、スペシャルシリーズ「812 コンペティツィオーネ」用の「F140HD」型に採用されたコンポーネントやソフトウェアが踏襲されるなど、細部にわたってアップデートが図られました。
その結果、最高出力は812スーパーファストの800cv/8500rpmに対し830cv/9250rpmへ向上。チタン製コンロッドやアルミニウム合金製ピストン、そして軽量なクランクシャフトなどの採用により、最高許容回転数は8900rpmから9500rpmに引き上げられています。
9000rpmオーバーの超高回転型でありながら、最大トルクの80%をわずか2500rpmで発生するというのですから、驚くべきフレキシビリティを備えたエンジンだといえるでしょう。
一方、最大トルクについては718Nm/7000rpmから678Nm/7250rpmに引き下げられました。これは、欧州の「ユーロ6E」など最新の排ガス規制に対応した影響だと思われます。
しかし、ギア比が適正化された「SF90ストラダーレ」譲りの8速DTC(デュアルクラッチ・トランスミッション)や新開発のトルク電子制御システム「ATS(アスピレーテッド・トルク・シェイビング)」を採用することなどにより、自然吸気V12エンジンならではの天井知らずの加速と、スペックのダウン分を補うトルク感を実現しているとのことです。
フェラーリの12気筒モデルにおける大きな魅力の一つであるエンジンサウンドもブラッシュアップされました。具体的には吸排気ダクトに革新的な設計を取り入れるなど最適化することで、点火順序による美しい倍音成分をすべて響かせる、フェラーリならではのV12サウンドを実現したといいます。
シャシーに目を向けると、回頭性を向上すべくホイールベースを812スーパーファストに対して20mm短縮。ボディ剛性も引き上げられ、ねじり剛性が812スーパーファスト比で15%高められました。
左右後輪を独立して制御する四輪操舵システム(4WS)、296GTBで登場し、今回V12モデルに初採用されたブレーキ バイ ワイヤをはじめ、ビークルダイナミクスをつかさどるさまざまな電子制御システムも最新仕様にアップデートされました。
このように、心臓たるV12エンジンからビークルダイナミクス、内外のデザインに至るまで、12Cilindri は812スーパーファストから全方位的に進化を遂げていました。しかし変わらないのは、250GTOや275GTBといった50~60年代の伝説的グランドツアラーから連綿と続く、エレガンスとパフォーマンスを兼ね備えたグラマラスなGTとしての魅力でしょう。
ちなみに、今回のジャパンプレミアではお披露目がありませんでしたが、同時に「12Cilindriスパイダー」も発表されました。価格は12Cilindriが5674万円、スパイダーは6241万円となります。
【スペック】
フェラーリ 12Cilindri
全長×全幅×全高:4,733×2,176×1,292㎜
ホイールベース:2,700㎜
トレッド:フロント1,686 リア1,645㎜
車両重量:1,560kg
駆動方式:FR
ホイールベース|2,700㎜
最高出力:830ps/9,250rpm
最大トルク:678Nm/7,250rpm
排気量:6,496㏄
トランスミッション:8段DCT
タイヤサイズ|フロント275/35 R21 リア315/35 R21
最高時速|340㎞
0-100㎞/h加速:2.9秒
Ferrari(フェラーリ)
文・山口幸一/提供元・JPRIME
【関連記事】
・ロレックスはもう時代遅れ?富裕層が熱狂する2つの時計ブランド
・初心者が摂りたい筋トレの効果を高めるサプリ4選
・筋トレと有酸素運動、順番はどちらが先か?理由と効果を解説
・筋トレBIG3とは?忙しい人こそ実践したいトレーニングを紹介
・初心者向け!ネット証券ランキング