プリンスの心臓を持つ「Z432」だが…期待は空振りに
初代S30型フェアレディZを、日本国内でもスポーツカーたらしめるため選ばれたエンジンは「S20」。
プリンスがレーシングカー「R380」に積むため開発したGR8を由来として、ツーリングカーレース用に開発したDOHC4バルブエンジンで、スカイラインGT-R(初代4ドアPGC10/2ドアKPGC10/2代目2ドアKPGC110)に積まれたことで有名です。
フェアレディZが発売された1969年10月時点では、既に同年5月のスカイラインGT-R(PGC10)デビュー戦で優勝するなど快調なスタートを切っており、Z432もフェアレディZの最強モデルとして期待されていました。
ちなみに「432」の名は「4バルブ・3キャブレター・2カムシャフト(DOHC)」を由来としており、GT-Rの「R」とはまた違った意味で高性能バージョンとしての凄みを見せていましたが、レース用には軽量化を徹底した「Z432R」も発売。
もちろん、スカイラインGT-Rと並ぶ日産の市販車ベースレーシングカーとして期待されたZ432Rでしたが、スカイラインに積んで走る分には名機と称えられるS20エンジンが、フェアレディZではどうもうまくいきません。
エンジンとは非常にクセの強く出る機械であり、車だけではなく飛行機などでも「名機なのに、特定の機体に積むとなぜか性能が全然出ない、場合によってはうまく動きすらしない」という事例が、ままあります。
S20を積むZ432に起きたのもまさにそんな事態で、高回転ハイパワー型のS20が起こす振動に、S30型のボディは全くマッチせず、レースに出場したZ432はソコソコの成績こそ残したものの、振動によりマトモに走らせることすら困難な代物でした。
その結果、ワークスチームはともかくプライベーターから嫌われたZ432Rはレース向けの限定生産だったにも関わらず在庫がダブつき、公道ではレースほどの問題が出なかったとはいえ、イメージ的にも期待外れに終わったのです。