日本の食料自給率の低さは兼ねてより問題視され、近年しばらく40%に満たない数値で推移している。日本よりもさらに比率が低い中、国を挙げて食料自給率の向上を本気で目指しているのが、アラブ首長国連邦(UAE)だ。UAEの食料自給率は2023年時点でわずか17%と、多くを海外輸入に依存している状況である。

UAEにおける食料自給率の低さの要因としては、砂漠地帯で農業に不向きな地理的環境や、耕地の少なさといった点が挙げられる。加えて、続く人口増加に伴う食料需要の増加にも対応せねばならない状況下において、UAEは2018年に「国家食料安全保障政策 2051」を発表し、国内の農業対策と海外からの安定的な食料調達に向け、本腰を入れて取り組んできた。

これは持続可能な社会の実現に向け、10年間で農産品の生産量を30~40%増加させることを目指すもので、「UAEを2051年までに世界食料安全保障指数で世界一にする(※2022年時点では23位。ちなみに日本は同年6位)」が戦略目標の一つとしてあることから、「2051」が同政策名にも含まれている。

そこで、UAE政府およびADQ社の協力のもと、2020年に鋭意設立されたのがアブダビに本社を構えるSilalだ。

UAEの食料安全保障を守る

※同動画は2024年6月現在で再生回数222万回を超え、注目度の高さが伺える。

Silalは、UAEの食料安全保障に対して揺るぎないコミットメントを持っている。戦略的な備蓄と包括的なアプローチを通じ、国民の福祉を保護すると、同社公式サイトでは強い意思が語られている。

「農場から食卓まで」──具体的なアプローチ
①データの透明性:政府機関と協力し、必需品の在庫に関するデータの透明性を確保し、リアルタイム情報に基づく意思決定を支援する。
②優先的な商品:小麦、米、豆類、食用油などの重要な必需品に重点を置く。
③効率重視のアプローチ:最先端の貯蔵インフラを開発し、UAE内での戦略的備蓄を維持する。

Image Credit:Silal

さらにSilalでは、緊急事態にも迅速に対応すべく、食料システムの供給やアクセス、また安定性に対する脅威にも対処するための管理を、最先端技術を用いて実施している。

食料安全保障を継続的に維持するために欠かせないのが、国内外のパートナーとの協力だ。同社では提携先との協力を通じて、食料供給チェーンの混乱を監視し、潜在的な課題を事前に特定・対処することで、危機時にUAEにとって重要な商品を確保する活動も行っている。

Image Credit:Silal

戦略的食料備蓄を目指した主なプロジェクトとして、Silalが公式サイトにおいて公開しているのが、アブダビのザイード港に設置した最先端の穀物サイロ(=タンク)だ。計10基、それぞれ2万tもの容量を貯蔵でき、温度制御、湿度調整、小麦冷却機能を持つ。このプロジェクトはUAEの食料資源の維持と強力な食料分配を可能とし、戦略的食料備蓄における変革の一歩となった。