③Flipkart(インド版Amazon)のAIショッピングアシスタント「Flippi」
インドの大手オンラインマーケットプレイスで「インド版Amazon」などとも呼ばれるFlipkart。インドのEコマース市場の中で48%のシェアを持つ、強大な総合ECサイトだ。ユーザは前年比21%増と成長を続けており、オンラインのスマートフォン市場では48%、ファッション市場では60%の市場シェアを保持すると推定されている。
そんなFlipkartは、ChatGPTを基盤としたAIショッピングアシスタントの「Flippi」を提供している。
使い方は非常に簡単だ。Flipkartのアプリ内でFlippiと対話を始めるだけで、さまざまなサポートを受けられる。たとえば「新しいスマートフォンが欲しい」「ランニング用のシューズを探している」などと打ち込むと、Flippiは適切な提案を行う。筆者もいろいろな商品探しに使ってみたのだが、筆者からの要望にストレートに応えるだけではなく、Flippi側から追加の質問もあり極力ニーズに近いものが提示されるようになっている点が良いと感じた。
たとえば「スマホが欲しい」と打ち込むと、スマホのおすすめ商品が提示されるが、同時に「どのブランドが良いですか?」「予算はどの程度ですか?」などの追加質問がくる。店員と会話をしながら絞り込んでいくようなイメージだ。
多くの場合、ユーザは自分のニーズを一度で完璧に言語化して打ち込むことは難しい。また、そもそもどのような選定軸で絞り込めば良いかも考えていない/わかっていないことが多い。このように一問一答でニーズを深堀りする形式は、ユーザの思考の負荷が少ない良いユーザ体験を作ることができていると感じた。一方で、質問内容がワンパターンであったり、細かい依頼をしても反映されないなど、まだ精度が不十分である部分もあった。今後のアップデートに期待だ。
多くの人が日常的に利用するアプリへのAI活用によって、インドの買い物体験はさらに向上している。消費者はより効率的でパーソナライズされたサービスを享受でき、企業も顧客満足度の向上と売上の拡大を期待できるだろう。これからも進化し続けるAI技術とその活用アイデアが、インド人の買い物スタイルをどのように変えていくのか、注目だ。
【著者プロフィール】
滝沢頼子/株式会社hoppin
東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。インドのバンガロール在住。