権力機関とメディアが結びついた冤罪、経営責任は?

 結果として公権力との関係においてテレビ局が間違った行為をしてしまった場合、経営トップの責任が問われるのも当然です。08年、日本テレビの『真相報道バンキシャ!』が、岐阜県庁の職員による裏金づくりが行われているという匿名の建設会社役員の証言を「スクープ」として放送しました。ところが、この建設会社役員が2カ月後に別の事件で逮捕され、面会した日本テレビの社員に対して一連の証言がすべて虚偽であったことを認めたことで、日本テレビは岐阜県に対して公式に謝罪し、当時の社長が辞任しました。今回の愛知県警のケースでは、警察官の見立て通りに撮影して番組を制作したら、結果的に見込み違いで逮捕した4人のうち3人が不起訴になったというケースです。推定無罪の原則を忘れてしまい、結果的には冤罪だった人まで犯罪者として報道してしまったのです。警察の見立てを信用してしまったからといって、テレビ局の責任が小さくなるというわけではありません。

 そういう意味では、テレビ東京の石川一郎社長の役員報酬30%を2カ月間返上というのは、報道機関のトップとしてあまりに軽い責任の取り方だと感じます。テレビ東京は推定無罪の原則をどう考えるのか。その議論を有耶無耶(うやむや)にして幕引きをしようとしている印象があります。「今後こうした番組をつくりません」と宣言したからといって、そこで許されるわけではありません。『警察24時』モノだけでなく、犯罪者を取り締まる公権力に密着するスタイルの番組は、麻薬取締官、税金Gメン、入国管理官などさまざまな分野に及びます。これを機会にそうした番組制作のあり方を根本的に考え直す必要があるのではないでしょうか。

(文=Business Journal編集部、協力=水島宏明/上智大学教授)

提供元・Business Journal

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