ビル・ゲイツ氏が「Banking is necessary, but banks are not. (銀行の機能は必要だが、銀行は必要ではない)」と発言したのが1994年。ちょうど30年が経過した現在、銀行口座を持たない人でもスマートフォンで金融サービスにアクセスできるようになった。

ところが近年は、生き残り戦略としてフィンテックが銀行化するトレンドが続いている。2020年にVaro Moneyがフィンテックとして初めてアメリカで銀行業免許を取得。イギリスでも2024年3月に、フルスタックBaaSプロバイダーとしては同国初とされる銀行業免許をGriffinが取得した。

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BaaSプロバイダーがイギリスで銀行業免許を取得

イギリスは国際的銀行業務の中心地にしてヨーロッパ最大のフィンテック投資先でもある。ロンドンを拠点とするBaaSプロバイダーのGriffinは、2024年3月11日に2400万ドル(約38億円)の資金調達および同国での銀行業免許取得を発表。

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金融サービス規制当局PRAおよびFCAの認可を受けた同社は今後「Griffin Bank」と名乗り、完全な銀行としての事業を展開することができる。

今回の調達ラウンドはMassMutual Ventures、日本が支援するNordicNinja、Breegaが主導したもので、既存投資家であるNotion CapitalおよびEQT Venturesが参加。2020年2月の320万ドル、2022年7月の1550万ドル、2023年6月のシリーズA1350万ドルと合わせ、Griffinの総資金調達額は約5600万ドルとなった。

俊敏でスケーラブルなバンキングサービスを提供

フルスタックBaaSプラットフォームとは、顧客企業がAPI経由で完全な銀行サービスを利用できる包括的なIT基盤のことだ。顧客企業はエンドユーザー向けアプリケーションの開発に集中できる。

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銀行化したといっても、Griffinがサービスを提供する対象は一般消費者ではない。組込み型金融サービスの統合により顧客体験を改善したいフィンテック企業が顧客だ。「フィンテックにとって理想的なバンキング・プラットフォーム」を謳うGriffinは、自社サービスについて次のようなメリットを強調している。
・ミドルウェアより強力なワンストップバンク:複数プロバイダーの各種インフラをつなぎ合わせる手間をカット
・金融サービスを迅速に市場投入可能:従来数ヵ月かかっていたオンボーディングが数日で完了
・簡潔なコンプライアンス対応:独自のKYC/KYB技術で簡単リスク管理、顧客取引をリアルタイムで可視化
・スケーラビリティと柔軟性:数百人から100万人の顧客でも対応可能