1. 定性的な評価の危険

    世の中には定性評価というものが存在をします。定性評価とは数値化できないものを評価項目として組み込んだ評価の仕組みです。例えば、以下のような項目が挙げられます。

    『積極的に業務に取り組んでいるか』 『勤勉に学びを得ているか』 『顧客目線を持てているか』

    このような評価項目はどのような危険が潜んでいるでしょうか?

    答えは評価者と被評価者の認識のズレが発生するということです。よくある話ですと、このズレを回避するために、自己評価、上司評価、役員評価という具合に評価回数を増やしていくというものがありますが、これも危険です。

    一定規模の組織になったときに役員は現場の実務の状況を正確に把握が出来るでしょうか? 限り無く不可能に近いはずです。ただでさえお互いの認識がズレるのに、距離が離れた人からの評価も加えてしまっては整合性は取れません。これまたよくある話ですが、

    『君の頑張りには感謝をしているが、上(役員会)で否決されてしまった』 『会社は君のことを見ていないから』

    という言葉が上司から出てしまうことがあります。もちろんこのようなことを組織が望んでいる訳はありません。しかし、結果的に誤解が生まれやすい仕組みになってしまっているのです。

    評価や目標の定量化は難しいことではありません。まずはどのような指標が自組織の成長に必要なのかを検討し、その上で、

    『積極的に業務に取り組んでいるか』 ⇒ 『新規契約件数〇件』 『勤勉に学びを得ているか』     ⇒ 『社内テストの平均点数〇点』 『顧客目線を持てているか』     ⇒ 『契約継続率〇%』

    というように定量化をして行けば良いのです。

    定量目標は冷たいものではありません。むしろ、誤解による不要な衝突を防ぐ、非常に暖かい仕組みと言えると考えます。

  2. 上司と評価制度(その1)

    評価制度と組織を論じる上で、別の視点で注意が必要であるポイントがあります。それは『上司が部下の成長を真剣に考えているか』というポイントです。

    『部下の悩みを真摯に聞く』、『モチベーションの上げ方を一緒に考える』といったマネジメントが重要であるとの論調がありますが、これには大きな疑問点が含まれます。仕事は私達を待ってくれません。やるべき仕事に取り組まない時間を作るということは、良い評価を得ていく点でも、自身の成長を加速させるという点でもロスタイムではないでしょうか?

    もちろん、部下の迷いを切り捨てても良いと言うのではありません。そもそも、そのような状態を作らないようにすることが重要であり、発生した問題に対し傾聴をするだけでは本質の改善にはならないということを御理解頂きたいのです。

    ただ、現実には、『頑張っていると思うよ』、『一緒に考えてみよう』などと、その場しのぎの対処に走ってしまう上司も少なくなく、結果、はたと気づいた時に部下は『何をやっているのだろう?』と迷いを感じてしまうのです。

  3. 上司と評価制度(その2)

    優れた上司は『どうすれば自組織が成長するか』、『どうすれば部下がより良い評価を得られるか』に関して、事前から考え抜き、実現させるためのマネジメントを行っている人です。大変に難しいことです。

    だからこそ、『俺の背中を見て育て』ではなく、データ(事実)に基づいて、必要な采配を取ることが求められます。上司こそが自組織の評価制度に精通し、どのような作戦で組織を運営するのか考えていなくてはなりません。

    ともすると、厳しいように見えてしまうかも知れませんが、『頑張っているね』、『良い感じだね』と中身が薄いマネジメントで、何となく部下をその気にさせる上司よりは、比べようも無いほどに重要な上司と言えるのではないでしょうか?