客数を抑えつつ客単価を引き上げる戦略

 以上のとおり、以前と比べるとチケットシステムが複雑化し、かつ高額化しているといえる。久しく足を運んでいない人は、隔世の感を抱くかもしれない。

 テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師の中島恵氏はいう。

「以前と比べると、現在はアプリが複雑化しすぎており、加えて客の出費が高額化しているという印象があります。丸1日いて園内の飲食施設を使用しないというのは難しいので、確実にいくつかのアトラクションを体験しようと思えば、一人当たり2万円以上の出費は覚悟しなければなりません」

 このような変化の背景には運営元のオリエンタルランドの戦略転換があるという。

「以前から激しい混雑と行列の待ち時間の長さが問題視されており、その解消が課題となっていたところでコロナ禍による売上減に襲われ、オリエンタルランドはリストラを余儀なくされました。2011年の東日本大震災の際には一定期間の休業も経験している同社としては、客数に頼ることなく、混雑と行列を回避するためにできるだけ客数を抑えつつ客単価を上げることで利益を伸ばすという戦略に転換しました。テーマパークというのは装置産業であり、多額の投資をして設備をつくり、スタッフとして多くの人的リソースを投下する必要があるため、できるだけ客単価を引き上げておくことが重要となってきます。

 そして、スマホが普及したことで、来場者がスマホのアプリ上でチケットを購入したりアトラクションの予約をできるようなったことも同社にとっては追い風となりました。『プライオリティパス』は発行数に限りがあり、人気のアトラクションはすぐになくなってしまうので、客に『また来て、今度は確実にあのアトラクションに乗れるよう有料のDPAを買おう』と思わせるリピーター獲得戦略になっている面もあるかもしれません」(中島氏)