「無印良品」を運営する良品計画の株価下落が続いている。生活雑貨事業で急成長を遂げた同社だが、現在国内事業における営業利益の減少や価格競争などに悩まされている。この状況を打開する鍵は何だろうか。良品計画の最新の決算から探っていこう。

無印の業績に異変?国内事業の営業利益が12.1%減

無印良品は2019年1月、通期営業益を下方修正した。売上高にあたる営業収益予想は4,093億円(前回予想4,243億円)に、営業利益予想は470億円(同500億円)に引き下げられたのだ。

その後、4月に発表した2019年2月期の連結決算では、国内事業の営業利益は前期比12.1%減の250億8,400万円だった。

過去の決算の数字を追うと、第1四半期は同1.3%増の88億8,200万円、第2四半期は同3.6%減の144億5,900万円、第3四半期は同9.7%減の215億7,300万円となっており、徐々に数字が低迷していることが分かるだろう。

ただし、2019年2月の連結決算では営業減益について「基盤固めのためのコスト増加」(決算資料)と説明されており、店舗スタッフの投資などに注力したことが影響したようだ。これを踏まえると、最新決算での営業減益は、中長期的にさらなる成長を目指すための「攻め」の結果であると見ることもできる。

国内事業では「生活雑貨」部門が苦戦

2019年2月期の連結決算では、国内事業の営業収益は前年同期比4.9%増の2,462億6,900万円だった。2018年2月期は前年比8.8%増、2017年2月期は前年比8.7%増だったことと比べると、売上高の伸びは鈍化してきている。

国内事業で足を引っ張ったのが「生活雑貨部門」だ。2018年度下期の売上高は、前期比0.7%減となっている。13.5%増を記録した食品部門と比べればその差は明らかで、ニトリなどの「高品質」「低価格」の生活雑貨を販売する競合企業の台頭が影響したという見方もある。

連結決算を発表した2019年4月には、直営既存店の売上高が前年比0.5%減を記録し、公表されている月次概況によれば、単月で減少を記録したのは2017年2月以来約2年ぶりだ。4月は予想以上に気温が上がらず、夏物の衣料販売が思うように伸びなかったことが原因と考えられている。

その後、2019年5月には直営既存店の売上高は前年比4.5%増と回復しているものの、4月以降良品計画の株価は下落を続けている。2018年の6月には一時4万円を超えていた株価は、2019年5月中旬に2万円台を割り込んだ。

アジアでは好調な海外事業、不安要素も

ここまで良品計画の国内事業について見てきたが、海外事業はどうだろうか。2019年2月期の連結決算では、営業利益が前期比19.2%増の191億7,500万円を記録し、伸び率でいえば国内事業よりも好調だ。

しかし、海外事業においても不安要素は少なくない。東アジアにおいては増収増益を継続しているものの、巨大市場中国では経済成長の減速や貿易摩擦など先行きの不透明さが気がかりだ。欧州では黒字化を達成したものの、北米事業では赤字幅が拡大していることにも注視すべきだろう。新規出店や改装計画が遅れ、在庫や物流関連の経費がかさんだことが赤字拡大の原因と見られている。

良品計画の海外部門の売上高は、2019年2月期の連結決算では1,634億円で、国内事業の売上高2,462億円と比べても、海外事業がすでに大きな割合を占めていることが分かる。国内事業だけでなく海外事業の好不調も、今後の業績に大きな影響を与えていくだろう。

価格競争にどう勝つかがカギ

近年は冷凍食品やレトルトカレーなどの食品事業に力を入れ、これまでのメインターゲットだった女性だけでなく、忙しいビジネスパーソンなど新たなユーザーの獲得を狙ってきた無印良品。2015年頃から急成長してきたものの、現在は生活雑貨や衣料品における価格競争という壁が立ちはだかっているようだ。この危機をどう乗り越えていくかにも注目したい。

中期経営計画では、ホテルや飲食店も併設した新しい業態の店舗「無印良品 銀座」に代表されるような、国内店舗の大型化や国内外店舗の改装を進めていく方針だ。
他にも、世界展開に向けてグローバル人事制度の構築などを打ち出しており、それぞれの今後の進捗状況についても目が離せない。

文・MONEY TIMES編集部
 

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