2011年の孫正義氏のプレゼン。「ドイツは65円/kWhでFITを成功させた」といって、日本でも40円以上の買取価格を求めた。当時のドイツの買取価格は20円だったのだが。
日本にメガソーラーを誕生させた、参考人・孫正義氏による国会でのプレゼン「電田プロジェクト」【全文】 ZypBM74D5
— 池田信夫 (@ikedanob) April 18, 2024
2012年12月に菅直人首相がトップダウンで事業用40円、住宅用42円という買い取り価格を決めた。日本でもメガソーラーなら当時でも20円以下だったが、それが2倍以上の価格で全量買い取り保証され、20年間リスクゼロなのだから、外資が大量に参入して数兆円の投資がおこなわれた。
バカ高い買い取り価格がつけられた結果、2030年までに累計44兆円の再エネ賦課金を電力利用者は払わなければならない。これは国家を巻き込んで再エネ業者に巨額の利益を与えた史上最大の詐欺といってよい。そして自然エネ財団が行政に介入する窓口になったのが、2020年にできた再エネTFだった。
大停電寸前でも「原発再稼動するな」と提言した再エネTF2022年の3月22日、東京電力の管内は大停電(ブラックアウト)の一歩手前だった。その最大の原因は、3月17日の地震で東電と東北電力の火力発電所が停止し、出力が335万キロワット低下したことだが、もう一つの原因は地震が3月に起こったことだった。
これについて、再エネTFは「電力は足りるから原発再稼動は必要ない」という提言を出し、業界を驚かせた。これに対して資源エネルギー庁がくわしく反論した。3月は約1000万キロワットが定期補修に入っており、最大に稼働しても4500万キロワット程度が限度だった。合計270万キロワットの柏崎刈羽6・7号機が動いていれば予備率は5%以上あり、大停電のリスクはなかった。
なぜ再エネTFは原発再稼動に反対するのか。その理由は、原発が動くと再エネが送電線にただ乗りできなくなるからだ。送電線は大手電力(旧一般電気事業者)が建設した私有財産だが、今は原発が動かせない大手電力の送電線を再エネ業者が借りて使っている。
しかし原発が再稼動すると、大手電力の送電が優先になるので、再エネ業者は自前の送電線を建設しないといけない。だから原発再稼動に反対するのだ。こういう再エネ業者のエゴイズムを提言と称して役所で発表し「電力は足りている」などデマを流す利益誘導が再エネTFの仕事だった。
電力自由化でエネルギー産業は崩壊した3・11以降、民主党政権が国際相場の2倍で全国民に買い取らせたFITと、違法に止めた原発によって日本経済は数十兆円のダメージを受け、今なお立ち直れない。その原因は、民主党政権のエネルギー政策を経済産業省が利用し、電力自由化の懸案だった発送電分離を強行したからだ。
発送電分離は、電力会社の発電部門と送電部門を分離して競争させる改革で、英米では1990年代におこなわれたが、日本では東電の政治力が強いため分離できなかった。ところが原発事故の処理で経営の破綻した東電が、原子力損害賠償支援機構の傘下に入って実質的に国有化された。
これは「親会社」になった経産省にとって千載一遇のチャンスだった。原発がすべて止まり、再エネの価格が世界最高になった状況で、エネ庁は無知な民主党政権を利用して火事場泥棒的に電力自由化を強行したのだ。
反原発・再エネ派にとっても、これは大勝利だった。発送電分離のもとでは、発電会社は供給責任を負わない。燃料費のかからない再エネ業者は安い限界費用で卸電力市場(JEPX)に卸し、固定費を負担しない新電力はそれを仕入れて高い小売値で売って大もうけした。
その結果、何が起こったか。1日のうち、太陽光発電が使えるのは3時間程度である。残りの21時間は、火力や原子力でバックアップしないといけないが、条件のいい昼間には再エネの電力を全量買い取るので、火力は止めないといけない。これによって火力の稼働率が落ちるので採算が悪化し、古い石炭火力が廃止された結果、毎年のように電力不足が繰り返されるようになった。
エネルギー安定供給に反対する河野太郎氏このような電力不足を防ぐために、経産省が導入したのが容量市場である。これは簡単にいうと、古い火力が採算に合わなくなっても、それを廃止しないで温存する制度である。具体的には電力広域的運営推進機関(広域機関)が4年後に必要な発電容量を公募し、オークションで発電会社から買い取る。
ところが再エネTFはこの容量市場に反対し、総合資源エネルギー調査会で執拗に反対意見を繰り返した。これをけしかけたのは河野氏で、2021年の第6次エネルギー基本計画が決まるとき、エネ庁の責任者を内閣府に呼びつけて「容量市場を凍結しろ」とどなり上げた。頭に来たエネ庁がこの音声データを週刊文春に売り込んで話題を呼んだ。
これがエネルギー基本計画に圧力をかけた河野太郎氏のパワハラ音声。このときも横に山田参事官がいて、再エネTFが同じ主張をしていた。つまりTFは河野太郎氏の鉄砲玉。
【音声】河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ」 JxGxQd6abK
— 池田信夫 (@ikedanob) March 27, 2024