(承)“こうたろう”ブーム

どうでも良いドラマ関連の話をもう一つ挟むと、最近、やたらと「こうたろう」が目に付く気がする。小泉孝太郎、吉田鋼太郎といった俳優の名前もさることながら、今シーズンのドラマだと『9ボーダー』の記憶喪失人物も“こうたろう”(松下洸平)で、『くるり』で現在、記憶喪失のヒロインと良い感じに近づいている元カレ役も“こうたろう”(瀬戸康史)だ。

さすがに“こうたろう”が人気の理由までは、どう頭をひねっても結論が出てこないが、「こうだろうか?」と割と弱気に悩むタイプが多い世相を反映しているのではないか、というのが苦し紛れの私の解釈だ。上記の例だと、吉田鋼太郎が良く演じるキャラを除いて(『おっさんずラブ』などでは、割と弱気な一面もあるが)、大体当てはまっている感じもある。

ドラマでは、そうした普段は優しくて何でも受け止めてくれて、ちょっと優柔不断な感じの登場人物がたまに毅然とした動きを出すと、いわゆる「ギャップ萌え」でキュンと来てしまったりするわけだが、それは実社会にも当てはまるのかもしれない。岸田政権の支持率などを見ているとそのように感じる。

あれだけ優柔不断の典型のように思われた岸田総理の在任期間だが、先月、気が付けば戦後の総理の中で単独8位の長さになった。

1位:安倍晋三、2位:佐藤栄作、3位:吉田茂、4位:小泉純一郎、5位:中曽根康弘、6位:池田勇人、7位:岸信介、8位:岸田文雄、9位:橋本龍太郎、10位:田中角栄と並べてみると、在任期間で考えれば既に大宰相である。

岸田総理から見ると、旧安倍派に端を発する裏金問題は「もらい事故」みたいなところがあるが、それにしても、危機を前に優柔不断なはずが、自らの派閥解散で自民党の派閥解消に道筋をつけたり、自ら政倫審に出席して予算成立の活路を開いたり、毅然としたアクションをとって好感度を上げた。もっと急落してもよかった政権・政党支持率は、一時期、少し踏みとどまった感が出ていた。

ただ、さすがにここに来て青息吐息な感じが如実に出ている。思ったより下がっていないとはいえ、朝日新聞や毎日新聞の調査だと、政党別支持率で立憲民主党の支持率が自民党を上回ったり、政権交代を望む層が、自公政権を望む層より多くなっていたりと、今まででは考えられない結果も出てきている。少なくとも自民党内で、「次も岸田政権で」と思っている人は旧岸田派も含めて、ほぼ皆無であろう。

こうなると、さすがに、総理本人が解散総選挙を断行して辛勝し、一か八か9月の自民党総裁選に臨んで再任を勝ち取ることを考えても、それはどだい無理な話となる。政治資金規正法の改正が山場を迎える中、せめてもの可能性として、岸田総理の大決断による「ギャップ萌え」をもう一度味わってみたい気もするが、どうも大胆な決断は出て来そうもない。さすがにここまでであろうか。

(転)立憲民主党の台頭

岸田政権の苦境を尻目に、ここに来て勢いを増しているのが立憲民主党である。党首の泉氏とは、大学時代からの知り合いでもあり、12月にも彼の個人的な後援会で講演をしてきたところだが、少し前までは、「打ち手なし」とも言うべき状況だったところから勢いをつけており、次期衆院選に向けての候補者もどんどん増やしている。

ちょっと前だと考えられなかった政権交代すら視野に入ってきている状況で、個人的には政権担当能力については疑問であるが、いつひっくり返っても不思議はないところまで来ている。一時の勢いから、ちょっと停滞感が出てきている維新とも好対照だ。

先般の補選3戦で3勝し(長崎や東京では維新の候補も破り)、先週末は、静岡県知事選でも立憲民主党の推薦候補が自民党推薦候補を破った。同じ時の都議補選でも立憲の候補が自民の候補に勝利した。

参議院議員選挙の東京選挙区で獲得票数を減らし続けてきて(約170万票⇒約112万票⇒約67万票)、当選者6人中の4位(5位との票差は小さく)で、次が危ぶまれていた蓮舫氏は、ここがチャンスとばかりに都知事選に名乗りを上げた。

小池氏の出馬表明の機先を制する形で(武道用語の「後の先」)、その直前に会見を行い、小池氏のこれまでの公約(7つのゼロなど)は全く守られていないと、激しい攻撃を加えている。※小池氏は、出馬表明を少し遅らせることに。

蓮舫氏と言えば、私が公務員をしていたころ、いわゆる事業仕分けの際に「2位ではだめなんでしょうか?なぜ1位でなければならないのか」と政府批判を繰り広げたことで有名であり、その言葉を、そっくりそのまま今回の都知事選で投げかけたい気もするが、冗談はさておき、その頃も今も、とにかく「敵」との違いを明確化し、論難・攻撃するスタイルが有名だ。

事業仕分けのことも、票を減らし続けている参議院議員選挙のことも、とにかく、過去は過去と割り切って、未来に向かうと言えば聞こえはいいが、あまりにも敵味方を峻別して違いを強調し、相手を論難する蓮舫氏のスタイルは、立憲民主党全体の悪しきイメージとなって世の中に拡散し、枝野氏から泉氏体制になって「忘れた」はずの「野党型スタイル」を思い出させることにもなり、泉氏にとっては、頭の痛い問題かもしれない。