「顧客の顧客」も自社の顧客、エンドユーザーを顧客とシェア
LayerがQuickBooksの独占市場を切り崩す可能性は、新しいビジネスモデルによるCAC(Customer Acquisition Cost:新規顧客調達コスト)の低さにあるかもしれない。
エンドユーザー獲得のためにマーケティングや営業努力が必要となるレガシーシステムに対し、Layerはエンドユーザーを自ら開拓する必要がない。直接の顧客であるShopifyやSquare、ToastなどがエンドユーザーのIT基盤として普及し標準化しているからだ。顧客企業の顧客であるエンドユーザーをシェアできるため、LayerのCACはゼロとなる。
「イネーブラー」が注力すべきは、豊富なユーザー基盤を持つ「ブランド」との戦略的パートナーシップ確立だ。だからこそ、LayerのプレシードラウンドにSquareやPlaidといった中小企業向けソフトウェア企業が参加した意味は大きい。
三方よしの組込み型SMBアカウンティングツールを提供するLayerの競合には、上述のEmber、TealのほかにHudlerやFisklなどがある。各社が切磋琢磨することで新たな市場が拡大するだけでなく、中小企業のエンパワーメントにもつながるはずだ。
(文・五条むい)