米国の著名ベンチャーキャピタリストAngela Strange氏が「すべての企業はフィンテックになる(Every Company Will Be a Fintech Company)」と題したプレゼンを行ったのが2019年のこと。2021年に「組込み型金融」(エンベデッド・ファイナンス)と呼ばれる分野が勃興し、大きなうねりが起きた。
組込み型金融サービスは急速に普及し、今ではAmazonやAppleをはじめ大手ECプラットフォーマーShopifyなどの非金融事業者が、オープンAPIを経由で自社アプリに金融サービスを統合、直接エンドユーザーに提供している。
組込み型金融に続いて「組込み型会計」サービス登場
そして今、アメリカやイギリスで注目されているのが「組込み型会計」(エンベデッド・アカウンティング)サービスだ。
2024年5月には組込み型会計スタートアップの資金調達が相次いだ。米サンフランシスコのLayerが15日に、英ロンドンのEmberが17日に、米マイアミのTealが20日にそれぞれ資金を調達。各社とも、会計システム市場シェアトップの大手に挑む意気込みを見せている。
今回が初の資金調達となったLayerは、プレシードラウンドで230万ドルを獲得。新たな市場の開拓をリードし、中小企業(SMB)の会計業務革新を目指すという。Better Tomorrow Venturesが主導した今回ラウンドに参加したのはSquareやPlaid、Unit、Checkなど。Layerが顧客とする「中小企業向けソフトウェア企業」が名を連ねた形だ。ブランドのサービスにイネーブラーの会計ツールを組込み
組込み型金融と同じく、組込み型会計サービスには下図のとおり3層の役割が存在する。「イネーブラー」層にあたるLayerは、簿記・会計機能を提供する役割だ。
POS/モバイル決済サービスのSquare、レストラン業界向けPOSシステムのToastといった企業は、「ブランド」層。Layerの会計ツールを自社ソフトウェアに組み込み、エンドユーザーである中小企業に提供する。
ブランド層企業のメリットは、金融サービスや簿記・会計サービスを統合したビジネスモデルによって、より快適でシームレスな顧客体験を提供できることだ。エンドユーザーへの提供価値および顧客維持率を高め、新規顧客の開拓も加速できる。