昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者・芦原妃名子さんの意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされるトラブルが表面化し、芦原さんが死去した問題をめぐり、芦原さんの原作代理人である小学館は3日、特別調査委員会がまとめた調査報告書を公表。芦原さんは再三にわたり原作のエピソードの入れ替えなどを行わず原作に忠実にしてほしいと要求していたが、それを日本テレビのプロデューサーが脚本家に伝えていなかった可能性があることがわかった。また、オリジナルドラマとなる9・10話の脚本を芦原さんが執筆するという条件や、芦原さんが制作・修正した脚本に創作を入れないでほしいとする要求についても、プロデューサーから脚本家に伝わっていなかった可能性がある。報告書は

「芦原氏が何度も同じ指摘をしないと原作に沿った脚本の修正がなかったことと、日本テレビ側が芦原氏の修正意見について反論して、従前の脚本を維持しようとしたことがあり、芦原氏や社員A(編注:小学館社員)に大きな負担を強いた」

「日本テレビ社員Y氏が、芦原氏の意向をふまえて社員Aがアレンジやエピソードの入れ替えなどをしないように何度も強く求めたことを本件脚本家に伝えていなかったり、監督など制作陣の意見を反映したりした可能性がある」

と総括しているが、改めて日本テレビ制作陣の姿勢が適切だったのかが問われている。

 報告書は、小学館の取締役2名と外部の弁護士3名からなる特別調査委員会がまとめたもの。

脚本家が芦原さんの説明に拒否反応を示していると小学館に伝達

 トラブルの原因は制作が始まる段階から存在した。小学館は当初から日本テレビ側に脚本家の人選について「原作を大事にしてくれる方でないと難しい」などと日本テレビに伝えていたが、脚本家は脚本作成を受諾する際に日本テレビから、この話を聞かされていなかった。そして制作が始まると、脚本家が制作したプロットと脚本に対し、芦原さんは

「エピソード順番を入れ替える度に、毎回キャラの崩壊が起こってストーリーの整合性が取れなくなってるので、エピソードの順序を変えるならキャラブレしないように、もしくはできる限り原作通り、丁寧に順番を辿っていって頂けたらと思います」

「アレンジが加わった部分から崩壊していってしまいがちな気がしていますので、何卒宜しくお願い致します」

「不用意なセリフの挿入で理解困難になっている」

などと指摘することが相次ぎ、「オリジナル展開の 9 話 10 話で、収拾つかなくなっちゃうんじゃないかと、不安に感じてます」との懸念も表明。これについて脚本家は調査委員会の調査に対し、聞いていなかったと証言している。

 8月に入り、第6話および第7話の各脚本(第2稿)が日本テレビから小学館に送られるようになると、芦原さんからの修正要請と日本テレビ側からの修正版のやり取りが繰り返され、日本テレビ側が芦原さんの修正要請を断るとともに、脚本家が芦原さんの説明に拒否反応を示していると小学館に告げた。

 そして芦原さんが自身の制作した8~10話の詳細プロットについて「一言一句絶対に変えない」ことを要求していることを小学館は日本テレビに伝えたが、日本テレビから小学館に送られた脚本には詳細プロットからの変更が入っており、不審に思った小学館は確認のため日本テレビに以下のメールを送信。

「確認なのですが、芦原さんが描き下ろした8~10話は基本的に変更無しで使用してほしい、という話は●●さん(本件脚本家。原文は実名)に伝わっていますか?●●(社員B。原文は実名)から●●さん(日本テレビ社員X氏。原文は実名)にもお電話差し上げたのですが、そのお話しは●●さん(日本テレビ社員Y氏。原文は実名)に伝わっていますでしょうか?」(報告書より)

 日本テレビ社員はこのメールに回答をせず、そして脚本家は一切聞かされていなかったという。そして芦原さんの憤りは、小学館の社員に以下文面のメッセージを送るほどであった。

「●●さん(本件脚本家。原文は実名)のオリジナルが少しでも入るなら、そもそも私は9、10話永遠にオッケー出さないです。●●さん(本件脚本家。原文は実名)の度重なるアレンジで、もう何時間も何時間も修正に費やしてきて、限界はとっくの昔に超えていました」(報告書より)