社会問題となっている“自動車への子供の置き去り事故”。JAFの2023年の調査データによると子供を残して車を離れたことのある人は全体の54.9%にも上り、事故の危険性がうかがえる。また昨年4月に保育施設の送迎バスへの置き去り防止装置設置義務が課せられたのも記憶に新しい。
世界的でもこうしたトラブルは問題となっており、自動車内で子供が熱中症で死亡する事故のうち55%が無意識の置き去りによるものというデータも。深刻化に伴い、子供置き去り検知機能を義務化する州も出てきている。
この問題を解決すべく各国で標準化や規制化が進んでおり、その波は部材メーカーにも押し寄せている。
日本の電子部品メーカーSMKとカナダのスタートアップPontosenseは、AIやミリ波レーダーを活用した「子供置き去り検知センサー」を、5月22~24日に開催された『人とくるまのテクノロジー展 2024』に出展。デモンストレーションを行った。今回はSMK イノベーションセンター事業開発部2課・瀬戸 雅英氏に技術や仕組みをうかがった。
Euro NCAPの要件を満たす高感度の「子供置き去り検知センサー」
ヨーロッパでは新車の性能や安全性を評価する「Euro NCAP(European New Car Assessment Programme)」に子供の置き去り検知機能が昨年に追加された。「子供置き去り検知センサー」は、その要件を十分に満たすセンサーだ。
同製品を車の天井に設置することで、乗員の有無、乗車人数、乗車位置、子供か大人かを判断する体格判別まで、わずか5秒で判定できる。
これまでは人を検知する際にカメラや重量センサーが使われることが多く、特に現在規制されているシートベルト未着用のシートベルトリマインダーの多くは重量センサーが使用されている。
しかしこれらのセンサーだけでは、子供の置き去り検知には不十分で、カメラには死角ができてしまうし、子供と荷物をうまく識別することも難しい。
一方、「子供置き去り検知センサー」は60GHz帯 FMCW方式レーダーを使用しており、ベビーシートに固定された赤ちゃんも識別できる。ベビーシートは前向き・後向きに設置されたり、子供に掛けた毛布で本体が見えづらくなったりと、カメラの設置位置によっては見えない場合もあるが、レーダー式であれば検知が可能だ。
もし置き去りが検知された場合には、車両に対してアラートを鳴らすだけでなく、エアコンを起動させる仕組みになっている。特にエアコンの起動はEuro NCAPに規定されており、EVの普及が進むヨーロッパならではの機能。
また同製品はシートベルトのリマインダーのほか、防犯機能も搭載している。この防犯機能は侵入者を検知するもので、車両が施錠されている状況で車室内または車両の周辺に人がいることを検知し、アラートで警告する。