秘密保持契約(NDA)を締結するときの注意点

秘密保持契約を締結するときに注意したい2つの点をご紹介します。契約書の内容を決める前に確認しておきたいポイントの他、締結後の注意点も解説しています。

秘密情報範囲外の情報が漏洩する可能性がある

秘密保持契約の書類を作る際に注意しておきたいのは、秘密情報以外の情報の漏洩です。秘密保持契約書では、最初にまず秘密情報の定義や内容、範囲を明記します。双方が内容に同意し、締結が完了すれば秘密情報として定義した内容や範囲の情報は保護されますが、逆に言えば、範囲外の情報は契約書の適用外となります。

範囲外の情報が漏洩する可能性があることを念頭に、どこまでを範囲として含めるのかを慎重に考えなくてはなりません。

情報開示をする際の経緯が複雑になる

秘密保持契約では秘密情報の範囲を明記するため、開示する情報がその範囲に含まれているかどうかは社内で確認を取る必要があります。社外に情報を出すまでの経緯が多少複雑になることは締結前に留意しておきましょう。あらかじめ確認フローを定めておくのがおすすめです。

情報開示に関する決まりをルール化し、社内で共有・周知しておくと適切に情報を取り扱える可能性が高くなります。

秘密保持契約(NDA)の内容・条項

秘密保持契約に必要な条項や書くべき内容は、どんな秘密情報を取り扱うのかによって異なります。ここでは記載するべき基本的な条項と、その条項が必要な理由を解説します。

タイトル

タイトルは「秘密保持契約」と書くことが一般的です。企業によっては「機密保持契約」とタイトルを付ける場合もありますが、意味はどちらも同じです。

双方の同意ではなく、一方的に契約書の内容に制約させる場合には「秘密保持誓約書」というタイトルを付けます。

契約の目的

契約の目的とは、条項より先に記載されている前文のことです。契約書を締結する両者を「甲」「乙」と定義する他、何に関する秘密保持契約なのかを明記するのが一般的です。

秘密情報の定義や内容、除外事由

この項目ではどんな情報を秘密情報として扱うのか、その定義と内容を記載します。一般的な秘密保持契約では、開示者が受領者に対して開示する全ての情報を秘密情報と定義することがほとんどです。その際は、口頭や電子ファイル、文書など開示する際の媒体の如何を問わないことも明記しておきましょう。

除外事由についても定める必要があります。除外事由とは、秘密情報に該当しない例外のことです。例えば、開示された情報が公知だった場合や受領者がすでにその情報を保有していた場合などが挙げられます。

秘密保持義務

秘密保持義務の項目は、秘密保持契約の中核をなす部分です。秘密情報の取り扱いに関するルールを記載します。受領者は基本的に、開示された秘密情報を第三者に伝えることはできませんが、企業によっては弁護士や関連会社などへの開示は可能にしてほしいと要望される可能性もあります。

そうした場合に備えて、開示できる範囲を指定しておく他、開示する際の手続きについても明記しておきましょう。

目的外使用の禁止

この項目では、項目名の通り目的外の使用を禁ずるという内容を記載します。「目的以外での使用を禁ずる」と曖昧な表現をしてしまうと、受領者側で拡大解釈されかねません。秘密情報の漏洩や目的外での使用などのトラブルが発生する可能性があるので、利用可能な範囲は明確に記載しましょう。

例えば、協業の話を進めるにあたって秘密情報の開示が必要なのであれば、秘密保持契約には「受領者は、開示者が開示・提示した情報を◯◯に関する協業のみで使用する」という意味の文章を記載します。

知的財産権の帰属

知的財産権の帰属とは、知的創作活動によって生み出された成果物が誰に帰属するのかを明示する条項です。

知的財産権とは、知的創作活動によって生み出された成果物を創作者が財産として保有するための制度のことです。知的財産権には「知的創造物についての権利」と「営業上の標識についての権利」の2種類があり、発明した技術や物品デザインなどの権利については「知的創造物についての権利」に含まれています。

知的財産権の帰属は、他社と協業し共同開発を進める際には定めておくと安心です。必ずしも定めなければならない条項ではないので、秘密保持契約を締結する目的と照らし合わせて条項の有無を決めましょう。

参照:特許庁「知的財産権について」

秘密情報の返還・破棄

秘密情報の取り扱いに関する条項のひとつです。受領者は、契約終了や開示者から指示や請求があった場合に、秘密情報の返還・破棄の義務があります。この条項が定められているため、受領者は秘密情報を自身の判断で破棄することができません。

電子媒体によって秘密情報を開示している場合は、返還・破棄が完了したかを確認することが難しいため、書面での報告を義務付けておくと安心です。

損害賠償

条項に違反した場合に備えて、損害賠償の内容も記載します。民法416条により損害賠償の範囲は、条項に違反したことによって生じた障害の賠償と規定されています。

損害には「通常損害」と「特別損害」の2種類があります。不履行の場合は通常損害に当たるため、条項に違反した場合に賠償義務があることを明記すれば問題ありません。

一方、特別な事情により損害があり、かつその損害が予見すべき内容であった場合は特別損害に該当します。より重要な秘密情報を開示する場合には、通常損害・特別損害どちらについても明記しておくことが望ましいです。

参照:民法

契約の有効期間と存続条項

秘密保持契約は、契約の有効期間を定めるのが一般的です。期間については、秘密情報の種類や価値、秘密保持契約締結の目的に応じて定めるのが基本です。例えば、技術情報の場合は2〜3年ほどを契約の有効期間とするケースが多くあります。

存続条項は、秘密保持契約の有効期間が終了した後も一部条項の効力を存続させることを記載する項目です。存続条項の有効期間は、秘密情報の内容によります。1〜2年程度が一般的ですが、秘密情報に個人の情報が含まれている場合は期間を設定しない方が安心です。

紛争解決

秘密保持契約をめぐって万が一、紛争が起きた場合に備えて記載しておきたい条項です。紛争を解決するには、公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを行って解決を図るのが一般的です。この項目では、その公正中立な第三者として、第一審専属管轄裁判所を記載します。

参照:政府広報オンライン「法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」」