秘密保持契約(NDA)と関連する法律
秘密保持契約を締結する前に、関連する法律について理解しておきましょう。それは「個人情報保護保護法」「特許法」「不正競争防止法」の3つです。これらの法律との関係を知ることで、適切な内容・タイミングでの契約締結が可能になります。
個人情報保護法
秘密保持契約と関連する法律のひとつが「個人情報保護法」です。個人情報保護法とは、個人の権利や利益を守りつつ、氏名や住所などの個人情報を企業が有用に活用するための法律です。
開示する秘密情報に顧客データが含まれている場合、秘密保持契約は個人情報保護法の規定を考慮した内容で締結する必要があります。
参照:政府広報オンライン「「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?」
特許法
「特許法」とは、発明の保護と利用を図ることを目的とした法律のことです。産業上利用可能かつ高度な技術で、産業の発達に寄与すると判断された発明が特許法により保護を受けられます。
開示する秘密情報の中に新規性のある技術の情報が含まれている場合、秘密保持契約を締結する前にまず特許の申請を行いましょう。特許法には、公知の情報では特許の申請が行えないという規定があります。将来、特許を取得する可能性がある情報は秘密保持契約前の取り扱い方や、技術のどこまでを開示するのか検討する必要があります。
参照:特許法
不正競争防止法
「不正競争防止法」は、事業者間の公正な競争を確保するために制定された法律です。不正競争の定義のひとつに「営業秘密の侵害」という項目があります。不正競争防止法により、企業が持つ独自情報は基本的には保護されています。
しかし、不正競争防止法が適用される情報には3つの要件があるため、範囲外の情報については法律により保護されません。より広範囲の情報を保護するには、秘密保持契約の締結が必要です。
参照:経済産業省「不正競争防止法の概要」
秘密保持契約(NDA)を締結するメリット
秘密保持契約は、自社の秘密情報を守るために締結する契約書ですが、他にもメリットがあります。2つのメリットがあることを知っておけば、必要なシーンで適切に秘密保持契約を結ぶことに繋がります。
不正競争防止法の範囲以上の秘密保持を行える
秘密保持契約を締結すれば、不正競争防止法の範囲以上の秘密保持を行えます。
不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争を妨げる行為を取り締まる法律のことです。不正競争防止法の対象のひとつに「営業秘密の侵害」という項目があります。これにより、営業活動を行う上で企業が生み出してきたさまざまな営業秘密は法的保護を受けますが、法律の保護を受けるには、以下3つの要件を満たす必要があります。
- 秘密として管理されていること(秘密管理性)
- 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
- 公然と知られていないこと(非公知性)
つまり、上記の要件を満たしていない情報は、不正競争防止法による保護の対象になり得ません。秘密保持契約では、この秘密情報の範囲を広げることが可能です。
参照:経済産業省「不正競争防止法の概要」
万が一の場合、損害賠償請求できる
秘密保持契約を締結しておけば、万が一相手方が情報を漏洩したり、契約内容以外の用途で利用したりした場合に損害賠償を請求できます。情報漏洩によって損害賠償が発生した事例は多く、賠償額はさまざまです。
秘密保持契約では損害賠償請求だけでなく、契約に違反する可能性があると認められた場合に仮処分を申し立てられる「差止請求権」も規定することができます。情報漏洩の被害を最小限に抑えられる可能性があるので、損害賠償に加えて項目に加えておきましょう。
参照:特許庁「差止請求権の在り方について」