表8 TFRと都道府県GDP、1人当たり県民所得
TFR 都道府県別GDP 1人当たり県民所得 北海道 1.2 19.73 283.2 青森県 1.31 4.46 262.8 岩手県 1.3 4.75 278.1 宮城県 1.15 9.49 294.3 秋田県 1.22 3.53 271.3 山形県 1.32 4.28 290.9 福島県 1.36 7.83 294.2 茨城県 1.3 13.77 324.7 栃木県 1.31 8.95 335.1 群馬県 1.35 8.65 328.8 埼玉県 1.22 22.92 303.8 千葉県 1.21 20.78 305.8 東京都 1.08 109.6 575.7 神奈川県 1.22 33.91 319.9 新潟県 1.32 8.86 295.1 富山県 1.42 4.73 331.6 石川県 1.38 4.53 297.3 福井県 1.57 3.57 332.5 山梨県 1.43 3.55 312.5 長野県 1.44 8.21 292.4 岐阜県 1.4 7.66 303.5 静岡県 1.36 17.11 340.7 愛知県 1.41 39.66 366.1 三重県 1.43 8.27 298.9 滋賀県 1.46 6.74 332.3 京都府 1.22 10.17 300.5 大阪府 1.27 39.72 305.5 兵庫県 1.36 21.74 303.8 奈良県 1.3 3.69 272.8 和歌山県 1.43 3.63 298.6 鳥取県 1.51 1.82 243.9 島根県 1.62 2.56 295.1 岡山県 1.45 7.61 279.4 広島県 1.42 11.56 315.3 山口県 1.49 6.15 324.9 徳島県 1.44 3.19 315.3 香川県 1.51 3.73 302.1 愛媛県 1.4 4.83 271.7 高知県 1.45 2.35 266.3 福岡県 1.37 18.89 283.8 佐賀県 1.56 3.05 285.4 長崎県 1.6 4.54 265.5 熊本県 1.59 6.11 271.4 大分県 1.54 4.46 269.5 宮崎県 1.64 3.6 242.6 鹿児島県 1.65 5.61 255.8 沖縄県 1.8 4.26 239.6出典:都道府県GDP(単位は兆円)は『週刊エコノミスト』(2024年4月2日)毎日新聞社:41 1人当たり県民所得(単位は万円)は総務省統計局『社会生活統計指標-都道府県の指標 2024』:30
ミルズの「社会学的想像力」ミルズによる周知の「社会学的想像力」で強調された「社会構造に関する公的問題」として前者が、「個人環境にかんする私的問題」として後者が該当するとしておこう(ミルズ、1959=1965:10)。
その後でこれまでの(上・下)と同じような方法で、TFRとの相関を取ってみた。ただし沖縄県の「都道府県GDP」は、最低ではないがかなり低い4兆2600億円であり、「1人当たり県民所得」でみれば都道府県では最低の239.6万円であった。
しかしながら、沖縄県のTFRは日本最高の1.80でもあったので、都道府県全体の普遍性を探求する手段としては、これまでと同様に沖縄県データを入れる場合と外す場合の両者で計算を行った。
東京都の独自性と沖縄県の個性への配慮同じく東京都でも、その「都道府県GDP」は2020年で109兆6000億円であり、2019年の「1人当たり県民所得」では575.7万円となり、いずれも都道府県では断然第1位を占めていた。同時にTFRの値が1.08と極端に低かった。
これらのデータから、いわば沖縄県と東京都とは真逆の位置関係にあると考えられる。そこで金銭面に関しては、47都道府県のうち沖縄県と東京都を入れる場合と外す場合を用意して、それぞれの相関係数を算出した。
まずは47の「都道府県GDP」とTFRとの相関を調べると、その相関係数rは-0.50500となり、両者間には「負の相関」が検出された。そして、沖縄県を入れずに46の「都道府県GDP」との相関係数rもー0.52485が得られた。すなわち沖縄県の有無に関わらず、「都道府県GDP」とTFRとの間には「負の相関」が存在していることが分かった。
次に東京都を入れる場合と外す場合も用意して、計算を行ってみた。まず沖縄県はそのままで、東京都だけを外した結果はr=-0.45353となり、「負の相関」が得られた。これは沖縄県を外して東京都を入れた場合のr=-052485とほぼ近似的な数値である。
さらに沖縄県と東京都のデータを外して、45の「都道府県GDP」とTFRとの相関係数を計算したらr=-0.46101が得られた。
「都道府県GDP」の大きさとTFRの低さとが相関それらの結果から、沖縄県と東京都のデータの有無に関わらず、この両者間では「負の相関」が検出されたことになる。マクロな指標である「都道府県GDP」の大きさとTFRの低さとが相関しているという結果が得られたことになる。
(2)「1人当たり県民所得」× TFR以上のようにマクロな「都道府県GDP」とTFRの間には「負の相関」が得られたが、もう一つのいわばミクロな「1人当たり県民所得」とTFRの間ではどのような相関があるのだろうか。
まずは47の都道府県「1人当たり県民所得」データ全体とTFRとの相関では、r=-0.45613が得られた。
次に沖縄県のデータを外してみたら、r=-0.41689となった。
3番目に東京都のデータを外すと、r=-0.34117になった。
最後に沖縄県と東京都のデータを外すと、r=-0.24524が得られた。
すなわち、「1人当たり県民所得」とTFRとの相関係数でも、47都道府県全体のデータで計算したら「負の相関」が、沖縄県データを外しても「負の相関」が得られたが、東京都のデータを外しても「弱い負の相関」になり、沖縄県と東京都のデータを外しても同じく「弱い負の相関」が確認されたことになった。
「少子化対策=子育て支援=支援金の配布」を超えよういずれにしても、「1人当たり県民所得」とTFRとの間に「負の相関」が成立することが分かったのである。
マクロな「都道府県GDP」とミクロな「1人当たり県民所得」という2種類の金銭的な指標からも、TFRとの間には「負の相関」が検出されたことにより、「少子化対策=子育て支援=支援金の配布」という「金銭面」だけが有効な対策にはなり得ないことが理解される。
本気で「こども真ん中」理念を政治の根幹に据えるのならば、月500円の国民負担をめぐる国会での攻防を超えて、次世代次々世代を社会全体で育み、結果として日常的な「生活安定」、長期的には「未来展望」が国民とりわけ若い世代にしっかりと感得できる社会づくりを目指すことが政治の課題であり、日本国が「沈まない」ための大局的な政策でもあろう。
【参照文献】
金子勇,2016,『日本の子育て共同参画社会』ミネルヴァ書房. 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房. Milles,C.W.,1959,The Sociological Imagination, Oxford University Press.(=1965 鈴木広訳 『社会学的想像力』紀伊國屋書店).提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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