アクセスランキングが1位と2位
ただ珍しいことに、アゴラ「社会保障」分野で「単身者本位の粉末社会(上)」は、アクセスランキングで初めて第1位になり、同じく(下)も第2位まで上がった。執筆した時点では、(上・下)ともにこれまでの「子育て共同参画社会論」の延長線上に位置づけられる内容だとしか考えてはいなかったので、これには喜びよりも驚きが大きかった。
おそらく(上・下)へのアクセスが多かったのは、1年前からの「異次元論争」に関する政府『こども未来戦略』や民間『人口ビジョン2100』で示された「戦略」への不満が強かったからであろう。
『こども未来戦略』では冒頭に「少子化は、我が国が直面する、最大の危機である」と書かれている。また『人口ビジョン2100』でも、最初に「このまま少子化に慣れてしまい、流れに身を任せるだけならば、日本とその国民が、人口減少という巨大な渦の中に沈みつづけていくことは明らか」とされていた。
支援金関連の国会での議論への不満しかし、そのような直近の「政策提言」を受けたはずの現国会で、繰り返される「支援金」関連のみの議論への不満が、国民には大きいように思われる。なぜなら、「最大の危機」と認識する政府が、2024年度から3年間かけて拡充する少子化対策の財源の一部に充てるために支援金の原資として期待する、国民一人当り月500円をめぐる与野党の攻防ばかりが目立つからである。
政府は26年度までに年3.6兆円の追加予算を投じる予定で、その財源の内訳は歳出改革で1.1兆円、既定予算の活用で1.5兆円、支援金で1兆円としている。この1兆円の原資について月500円の議論がなされているのである。
これまでにも証明したように、TFRを左右するのは政府からの支援金や子ども手当などの金額の多寡ではない(金子、2016;2023)。それを忘れたかのような月500円の是非をめぐるだけの議論から、「巨大な渦の中に沈まないような」長期的な人口反転政策がどこまで期待できるのだろうか。
「都道府県の幸福度ランキング」さて、(上・下)で8指標の相関係数の説明を終えた直後に、たまたま書店でバックナンバーの『週刊エコノミスト』(2024年4月2日号)を手に入れた。そこには2022年に日本総合研究所が実施した「都道府県の幸福度ランキング」結果の一部が紹介されていた。
これはいわば1970年代からの「社会指標」研究の実践に該当するが、幸福度評価が80の客観指標で測定されている。「社会指標」は現在の「生活の質」、HDI、BLIなどの根底にある理論と方法を兼ね備えている分野である(金子、2023:135-151)。
客観指標による測定多くの場合は客観指標と主観指標に分けて、客観指標ならばその測定結果を比較可能な標準化変量(平均値からどれだけ離れているか)に置き換えて、都道府県ごとに均等加重した合計値を得点とする方式でまとめたものになる。「幸福度ランキング」も同じ方式で作成されている。
その指標は表7のように7領域に分類され、それぞれの領域ごとに5指標、10指標、25指標の具体的な客観指標が用いられている。
その結果も興味深いが、それ以外にも貴重なデータとして「都道府県GDP」が掲載されていたので、合わせて総務省統計局の『社会生活統計指標』に掲載の「1人当たり県民所得」を付加した表8を作った。
いわば金銭面でのマクロ版が「都道府県GDP」(単位は兆円)であり、ミクロ版が「1人当たり県民所得」(単位は万円)に該当する。これらは現国会で議論されている支援金と同じく「金銭」のデータである。