※太字や(※)注は、筆者です。

Hayek Explains Emergency Powers(ハイエク、緊急時の権限について語る)

支配階級の本性は、緊急時に明らかになる傾向があります。

さらに、「緊急事態」と宣言された時は、国家権力に対する通常の憲法上の制限(例えば「三権分立」など)では、政権権力を実際に抑制することはほとんどできない傾向があることが明らかになっています。

もちろん、すべての憲法上の制度が、このような状況において同じように悪いというわけではありません。

しかし、コロナのパニックとそれに続く危機によって、緊急時における州の権限を制限することを目的とするならば、ほとんどの連邦政府、州政府、地方政府の制度が非常にお粗末な構造であることが示されました。

具体的には、米国では連邦政府と州政府は、緊急事態を宣言する機関と緊急時に権力を行使する機関が同じになるように組織されています。

例えば、コロナ危機の時の展開では、緊急事態を宣言する権限を持ったのは州知事であり、緊急事態の間に強化された政治的権力を享受したのは、知事に報告する州官僚でした。

その結果、緊急事態を宣言したのも、緊急事態が続く限り絶大な権力を行使することになったのも、まったく同じ人物であることが多かったのです。

ほとんどの州では、知事とその側近がその役割を担っていました。

緊急事態の終結、ひいては行政府が享受していた政令による支配の終結には、しばしば州議会の高度な集団行動が必要とされました。

ほとんどの州では、緊急事態を終結させるには、最低でも議会の少なくとも一院が緊急事態を終結させる決議を採択する必要があります。ほとんどの州では、 両院がこの決議を採択する必要があります。

州によっては、議会が会期外である場合、緊急事態の終結を議会が決議するためには、知事が議会を招集しなければならなりません。言うまでもないことですが、知事がこのようなことをする理由はありません。

さらに、ほとんどの州では、知事は議会の承認なしに緊急事態宣言を何度も、場合によっては 永久に更新することができるのです。

緊急事態の終結のためには、緊急事態宣言に反対する議員を集め、決議案を採決するための、議会側の重要な組織化と集団行動が必要となります。

一方、緊急事態宣言は、一人の人間の判断だけで可能な傾向があります。

言い換えれば、この制度は、緊急事態令の制定と延長に大きく有利に偏っている一方で、緊急事態令を廃止しようとする努力には不利に偏っているのです。

F.A.ハイエクは、『法・立法・自由 』の第3巻で、アメリカの制度がこうした「緊急事態」に対していかに意味のあるチェックを提供できていないかを示す一例として、このような制度である必要はないことを示しています。

緊急事態を宣言する人々が、緊急時に大きな権力を享受する人々と同じでなければならない理由はありません。

この問題に関するハイエクの思想をより深く理解するために、以下に長い文章を引用します。