岸田文雄首相は3月27日に、憲法改正による緊急事態条項の新設に関し「首都で大きな災害が起きた場合、国会の権能を維持できるかどうかは平素から考えておくべき課題だ」と語りました。

首相「大災害で国会権能維持は課題」緊急事態条項巡り

しかし総裁任期が迫る中、改憲は難しそうです。

下記の記事によると、衆院憲法審査会は2023年6月に緊急事態条項に関する各会派の立場をまとめた論点整理にこぎ着けたものの、その後の与野党協議に具体的な進展は見られないとのことです。

「9月までに改憲」絶望的 岸田首相公約、迫る総裁任期

岸田首相の任期内に改憲はないかもしれませんが、緊急時の権力については、個人の自由を重視する人にとっても、平時に考えておくことが重要です。緊急時には、そのようなことをゆっくり考える余裕はありません。

コロナ禍では何度も「緊急事態宣言」が発令されました。

当時のことを思い出しながら読んでいただけると嬉しいです。

特に気をつけないといけないのは、自由主義者でオーストリア学派の経済学者であるマレー・N・ロスバードが言うように「全体主義が醜い頭を上げるときには常に『緊急事態』を言い訳にする」ということです。

そして、「権力を握った人は、自分からその権力を手放すことはない」ということも重要な点です。

緊急事態だと判断し緊急事態宣言を発令する人(機関・組織)が、緊急時に権力を行使する人(機関・組織)と同じ場合、個人の自由にとって非常に危険になります。

権力を握った人は、緊急事態が続く限り権力を行使できるので、緊急事態を引き延ばそうとするだろうと考えられるからです。

今回はそれらに関連して、アメリカの自由主義系のシンクタンク「ミーゼス研究所」のHPの掲載の論文を一部要約して紹介します。

「Hayek Explains Emergency Powers(ハイエク、緊急時の権限について語る)」というRyan McMaken氏の論文で、2024年3月5日に掲載されたものです。

アメリカの話ですが、日本でも同様だと思います。