ビジネスシーンでマッチポンプを行うリスク

ビジネスシーンでマッチポンプを行うと、それが明るみに出たときに「マッチポンプ商法」とみなされ、信頼低下や法令違反などのダメージを受けることがあります。ビジネスシーンでマッチポンプを行うリスクを紹介します。

行き過ぎると「マッチポンプ商法」と見なされ、信頼低下を招く

マッチポンプ商法は自ら問題を起こして解決し、その見返りとして利益や評価を得ようとする行為です。ビジネスシーンでは顧客獲得や売上向上のために行われることもありますが、行き過ぎると企業やブランドの信頼を損なうことになるでしょう。

詳しくは後述しますが、害虫駆除業者や金融機関、コンサルタントなどが顧客の不安を過度に煽り、必要以上の商品やサービスを販売するような事例が挙げられます。

顧客を騙しているわけではなく、法的な責任には問われなかったとしても、過度に不安を煽る行為は自社のイメージダウン・信用失墜につながります。今はSNSや口コミサイトですぐに情報が拡散される時代であり、このような悪評もすぐに広がってしまうでしょう。

悪質なマッチポンプは法令違反になることも

悪質なマッチポンプは法令違反になるリスクもあります。顧客からの信頼を失うのはもちろん、営業停止や罰金、代表者の逮捕などにもつながりかねません。

具体的には景品表示法や詐欺罪などに問われるリスクがあります。たとえば害虫駆除業者が存在しない害虫の被害を訴えて契約を結ばせる、嘘の広告や資料を使い消費者を騙して契約させるなどの行為は悪質性が高く法令違反となる可能性も高いでしょう。

マッチポンプ商法の例

マッチポンプ商法は企業の信用失墜だけでなく、法令違反による罰則のリスクもあります。具体的にどのような行為がマッチポンプ商法にあたるのか、8つの例を紹介します。

ステルスマーケティング

ステルスマーケティングとは、広告であることを隠して広告を配信すること、客観的な情報に見せかけた広告を配信することです。令和5年10月1日から景品表示法違反となりました。

具体的には、有名人やインフルエンサーが自らの意思で商品を推奨しているように見せたり、提供を受けていることを明示せずに口コミを投稿したりすることが挙げられます。本当に自らの意思で、自分が使っている商品として紹介するのは問題ありませんが、実際はプロモーション依頼を受けていた場合はステルスマーケティングとなり問題となります。

サクラ

サクラとは、実際には顧客ではない人を雇い、顧客であるかのように見せかける手法です。店舗やイベントにサクラを雇って人気があるように見せかけたり、口コミサイトやレビューサイトで高評価のレビューを投稿させたりなどの行為がサクラにあたります。

消費者に誤解を与えて商品やサービスが人気である、多くの人が使っている信頼できるものであるように見せかけることが目的です。

小さな飲食店やサービス業などでは、客足が悪いときに知人に客として来店してもらい、サクラになってもらう代わりに格安で料理やサービスを提供することもあるでしょう。サクラはステルスマーケティングと異なり法令違反とはいえませんが、行き過ぎると自社の信用失墜につながるのはたしかです。

レビューの偽装

口コミサイトのレビューを偽装したり、自社HPの「お客さまの声」に虚偽情報を載せたりする行為もマッチポンプ商法のひとつです。

自社従業員やクラウドソーシングで集めた人に故意に嘘のレビューを書かせるケースもありますが、自社の意図とは関係なく、嘘のレビューが書かれてしまうこともあります。

たとえばクラウドソーシングで「〇〇のレビューを書いたらxx円」のような募集をかけたとしましょう。使ったことのない商品やサービスに対して、報酬目当てで嘘のレビューを書いてしまうワーカーもいます。

このようなケースはマッチポンプ商法とはいえませんが、外部からはそう見えてしまうかもしれません。

炎上商法

炎上商法とは、故意に炎上を起こして注目を集める手法です。単に知名度を上げるために行われることもあれば、商品やサービスの販売につなげる目的で行われることもあります。

故意にしろ過失にしろ、炎上はイメージダウンにつながります。一時的な知名度・利益アップは期待できるかもしれませんが、ブランドイメージが損なわれるリスクが高いです。

害虫駆除や屋根修理業者の自作自演

害虫駆除や屋根修理などの業者のなかには、実際には被害がないのに被害があるかのように装い、高額なサービスを契約させる悪質業者もいます。ひどい業者だと、無料点検を装い屋根に上って故意に壊す、自ら害虫を忍ばせ駆除を申し出るようなこともあります。

壊れていない屋根を壊して修理を申し出るようなケースは、マッチポンプ商法である以前に、器物損壊に問われる悪質な行為です。

欠陥のある商品

商品に「壊れやすい」「使いづらい」などの欠陥をわざと残し、修理や高額商品への乗り換えを提案するような手法もあります。欠陥品を売りつけたうえに、不当に修理費を得たり高額商品を販売しようとする、悪質な手法といえます。

不安を煽ったサービスの販売

相手の不安を過度に煽り、商品やサービスの販売につなげる手法です。営業や広告では不安を煽るようなセールストーク・キャッチコピーが使われることも多いですが、これも行き過ぎるとマッチポンプ商法として信頼失墜につながります。

もちろん、実際にあるリスクやデメリットを伝え、それを解決するために商品やサービスを提案する程度なら問題はないでしょう。

たとえば英語教材の会社が「吸収が早い子どものうちの方が英語の覚えも早いですよ。大人になってから覚えようとしても大変ですもんね」とセールストークをする程度なら大きな問題にはならないかもしれません。

しかし、「これから日本は不景気になります。お子さんが大人になる頃には海外に出稼ぎに行くのが当たり前になるでしょう。そのとき英語ができなければ、お子さんは生きてはいけませんよ」のように過度に不安を煽るのは、悪質なマッチポンプ商法といえるでしょう。

不要な医療行為

必要ない検査や治療を行い、医療費を請求する行為です。患者の不安を煽り、必要以上の検査や治療を施したり、高額な医療機器や薬を販売したりします。

ひどいケースでは健康な患者に不要な治療・投薬をし、その副作用に対してさらなる治療や投薬を提案することもあります。

相手の不安を煽り不当に利益を得るだけでなく、心身の健康をも損なう悪質な行為です。